野球の打撃においてヒットやホームランとなる打球を放つために打者が行なうべきことの1つは、ボールとバットのインパクトまでにできるだけバットを加速させ、大きなスイングスピードを獲得することである。スイング動作では両足が地面に対して互いに反対方向の力を作用させることで、その反作用の力によって身体の回転運動が生じることとなる。この回転が体幹、上肢、バットを伝達することによってバットは加速される。スイング中では両股関節が力学的エネルギーの発生源であることが報告されており、また体幹部はそのエネルギーを上肢へと伝達するための部位であることが示されている。これらの事から、打撃において、股関節や体幹部の働きやそこに付着する筋は重要であり、スイングスピードとの関連が示すことができれば、野球の打撃においてスイングスピードを向上させるための効率的なトレーニング提案することが可能となる。本研究では、野球打者において股関節や体幹部の筋の大きさとスイングスピードとの関連を調査した。 その結果、体幹部や臀部、大腿部のほとんどの筋の大きさとスイングスピードとの間に関連がみられた。一方で体格を考慮した場合には、左右の内腹斜筋とハムストリングス、打席に立った際の捕手側の脊柱起立筋と投手側の大腿四頭筋にのみ関連がみられた。これらより、上述した体格を考慮した際に関連がみられた筋を発達させることがスイングスピードを向上させるために効率的なトレーニング方法として示唆された。今後は関連が明らかになった筋をトレーニングすることによる縦断的なスイングスピードの変化を調査していく必要があろう。
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