研究課題/領域番号 |
18K17847
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
長尾 秀行 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 契約研究員 (70783926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウエイトリフティング / ウエイトリフター / スナッチ / ジャーク / スポーツバイオメカニクス / 動作解析 |
研究実績の概要 |
2019年度におけるウエイトリフティングの国内外主要大会である全日本選手権,全日本ジュニア選手権,世界選手権および世界ジュニア選手権において,男女の全リフティング動作を映像として記録した.記録した試技数は約7,500であった.昨年度は,スナッチの成功試技とバーベルを前方へ落下させる失敗を比較してスナッチの成功要因を明らかにしたが,本年度は,成功試技とバーベルを後方へ落下させる失敗を比較してスナッチの成功要因を検討した.同じ重量でスナッチの成功試技と失敗試技があり,かつ失敗の場合はバーベルを体の後方へ落下させてしまった試技があった選手を対象として,スナッチのバーベルの軌跡に関するキネマティクス的変数およびキネティクス的変数を成否試技間で比較した.分析の結果,バーベルを挙上した高さやバーベルの鉛直速度は成功要因ではなく,一方でバーベルの後方変位量がスナッチの成功要因の一つであることが示唆された.バーベルの後方変位量は,成功試技とバーベルを前方へ落下させる失敗を比較した場合でも成功要因であることが示唆されているため,スナッチにおいてバーベルの後方変位量はスナッチの成否を左右する重要な変数であると考えられる. 今年度の分析結果は,日本ウエイトリフティング協会主催の指導者講習会において,各都道府県の指導者に情報共有した.さらに,本研究活動で開発した,映像データからバーベルの位置を自動でデジタイズする手法について,セミナーにて公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度後期から新階級が導入された.これによって,各階級のシニアおよびジュニアなどのカテゴリ間の比較を単純に行えない状況にあったが,2019年度に新たにデータを取得することができたため,研究活動の進捗は概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の大会を対象にしてさらに挙上動作を記録する予定であったが,新型コロナウイルスの影響で大会が中止または延期となっている.しかし,2019年度の活動によって,様々な地域,男子と女子,ジュニアとシニアの挙上動作について,ある程度の数を記録できたと考えている.従って,今後はまず地域,性別,カテゴリおよび階級ごとに成功試技および失敗試技,成績上位群および成績下位群などについて,スナッチ,クリーン&ジャークごとに集計する.バーベルの位置座標の算出方法については,分析対象試技が多いため,手動でデジタイズすることは現実的ではない.そこで,本研究活動では,Kanade-Lucas-Tomasi (KLT)アルゴリズムを用いた自動デジタイズを採用する.そのため,先に述べた集計結果に基づいて挙上技術の分析を開始する前に,自動デジタイズの精度検証を行う.自動デジタイズの精度は実験室環境で実施し,挙上動作を光学式モーションキャプチャシステムとこれまで競技会場で挙上動作を記録することに用いたデジタルカメラで同時に記録し,両者のデータを比較することで検証する.自動デジタイズの精度を明らかにした後に,挙上技術について分析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度後期にオリンピック階級の変更が決定した.それに伴い国際ウエイトリフティング連盟は新たな階級を発表した.日本ウエイトリフティング協会も追従した.研究計画では世代間,男女の性差などを明らかにすることが目的であったが,階級変更前後では,あらゆる独立変数に関して比較することが困難となる.したがって,当初の目的を果たすために階級変更後の主要国内外大会について引き続きデータを収集する予定であった.しかし,新型コロナウイルスの影響で,すでに国内外の大会の延期および中止が確定している.現在は本年度の全日本選手権を対象にデータ収集を検討しているが,大会の実施が中止または延期になる可能性がある.その場合は,その分の経費をデータ分析のための諸経費に用いる.
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