研究課題/領域番号 |
18K17851
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 回転球 / 空間的平均化 |
研究実績の概要 |
本研究では、東北大学流体科学研究所の1-m 磁力支持天秤装置(1-m MSBS)を用い、ゴルフボールの様な球体にディンプルが付いた回転体の位置姿勢を空間的時間的平均化処理により通常の非回転球の場合と同様に磁力支持する流体力計測技術を獲得することによって、物体まわりの流れが変化する臨界レイノルズ数領域を含んだ流れ中での支持干渉のない空力特性を明らかにすることを目的としている。 1-m MSBSは、模型に挿入した永久磁石と周囲に配置したコイルが作る磁場の相互作用により模型を支持する。模型の位置姿勢は複数台のラインセンサーカメラで測定されコイル電流フィードバック制御用計算機に入力される。このセンサー系は円柱模型や非回転球模型等の位置姿勢を測定できるが、本研究が対象としている回転するゴルフボールのような模型にそのまま適用することは出来ない。そのため、センサー較正試験用模型の製作、回転球をセンシングするための新ラインセンサーカメラ配置(新センサー系)への改修、新センサー系での位置姿勢測定精度検証を行った。 新センサー系では空間的平均化の有無によらず、従来センサーに比較して精度は1オーダー低いものの、無回転球の位置姿勢をセンシング可能なことを確認した。精度の悪化はセンサー信号の変化を線形近似して位置姿勢へと変換していることが大きく影響していると考えられるため、非線形項まで考慮することでより高精度な位置姿勢計測が可能と考えている。空気力測定の際には平均時間を今までよりも十分長く取ることで追加の対策とする。また、空間的平均化によりボルフボールのディンプルのような表面形状の影響を大幅に低減できることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究に使用する磁力支持天秤装置は共用設備として学内外の利用があるため、自身の利用期間はこれらの期間を避けて申請している。このため、確保できた利用期間は年に2回と限られていた。 本研究では、設計模型重量・慣性モーメントとコイルに流すことの出来る電流の制限値、通風時の空気力等を考えると、模型内磁石には残留磁束密度のなるべく高いグレードを採用する必要があり、模型に合わせて磁石のサイズも最適になるように検討すると特注品となった。このため、当初予想を超えて納期がかかり、さらに磁石を製造している中国の春節の影響により、割り当てられた磁力支持天秤装置利用期間までに納入されなかった。また、本研究の模型は先述の理由により重量や寸法に制限があり、設計がシビアであるため、磁石の寸法、重量を正確に把握した上で製作する必要があったことから、風洞試験用回転球模型も製作できなかった。 これらのことから予定していた浮揚試験を実施できず、研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで行った回転球のためのセンサー系の検討・実験により、1-m 磁力支持天秤装置による回転球の流体力計測の実現は可能と判断している。 当該年度に新センサー系の導入を完了しているため、H31年度はディンプルのない回転球模型を製作すれば、直ちに、これを磁気支持した状態での空気力測定技術獲得へと研究を進めることが可能となる。また、ディンプル付きの回転球模型についても、ディンプルなし模型と部品を共用し、同時期に試験できるように準備することで研究の遅れを挽回する。これにより、空間的平均化技術やローパスフィルタを用いた時間的平均化技術の妥当性も同時に検証出来ることとなる。そして、これらについて学会等で発表するとともにジャーナルへ投稿することにより、最低限の成果を発信することが出来ると考えている。 また別途獲得した科研費で、1-m 磁力支持天秤装置に対して非接触計測技術であるParticle image velocimetry (PIV)を用い、流れ場の可視化を行う準備も並行して進んでいる。最終的に、この非接触計測技術と融合させ、回転球周りの流れ場を理解する助けとなるデータを得ることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究に遅れが生じ、製作予定だった風洞試験用回転球模型を製作することが出来なかったため次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて風洞試験用回転球模型、ディンプル付き回転球模型の製作に当てる計画である。
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