膝の前十字靭帯を損傷したアスリートの多くは、受傷前と同じ競技レベルでのスポーツ復帰を目的に靭帯の再建術を受けるが、再建術も再損傷に対する恐怖心が 強いアスリートはスポーツに復帰できていないことが問題視されている。元のレベルのスポーツに復帰できていない再建術後アスリートを対象とした自身の研究 より、ジャンプ後の術側下肢での着地において着地の衝撃が小さくなることを明らかにした。これは膝に過大な負荷が加わらないための回避反応と考えられてい るが、着地動作においてどのような回避行動を示すかは明らかになっていない。 今回の研究の目的は、「前十字靱帯再建術後アスリートに再損傷に対する恐怖心と術側下肢の着地動作時の下肢関節角度との関連性を明らかにし、スポーツ復帰 に向けた術後リハビリテーションに役立つ知見を得ること」である。 今回の研究では、初回前十字靱帯再建術とリハビリテーションを受け、医師よりスポーツ復帰を許可されたアスリートを対象としている。計測項目は、対象者の 基本属性、再損傷に対する恐怖心、膝の理学所見、着地動作課題とする。再損傷に対する恐怖心は、Tampa scale for kinesiophobiaの日本語版を用いる。着地 動作課題では、電子ゴニオメーターを膝関節に貼付し、着地動作中の関節角度を計測する。統計解析では、kinesiophobiaを従属変数とし、それに関連する着地中の関節角度やその他の運動力学的変数を分析する。 令和2年度は計4名の計測を終了した。新型コロナウイルスにより想定より対象者のリクルートが不足した。得られたデータの中で統計解析による成果を報告する。
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