研究実績の概要 |
今年度は,暑熱環境下における運動トレーニングの時間帯が暑熱順化後の呼吸・脳血流反応に及ぼす影響を検討した。健康な成人男性を対象とし,6日間の暑熱下運動トレーニングによって暑熱順化を引き起こす前後で,安静時暑熱負荷テスト (深部体温を1℃上昇) を行った。暑熱負荷テストは,朝 (7:00) および夕方 (17:00) の2つの時間帯において,高CO2吸入および過換気を行い,呼気終末CO2分圧(PETCO2; 動脈血CO2分圧の指標)を低下および上昇させることによって,CO2に対する脳血流の応答性 (PETCO2と脳血管コンダクタンスの関係における回帰直線の傾き) を評価した。運動トレーニングは,夕方の安静時暑熱負荷テストと同時間帯の16時~20時に固定して実施した。運動は暑熱環境下 (室温35℃,湿度50%) において,中強度の負荷 (最高酸素摂取量の50%負荷) で1時間の自転車運動を行った。その結果,過換気によるPETCO2低下時の傾きは,暑熱順化前後で朝と夕方ともに有意な違いはみられなかった。また,高CO2吸入によるPETCO2上昇時の傾きも,暑熱順化前後で朝と夕方ともに有意な違いはみられなかった。脳血流反応の経時変化は加温時間に伴い徐々に低下したが,この変化に暑熱順化前後で朝と夕方ともに有意な違いはみられなかった。これらの結果から,本研究において暑熱順化によって安静加温時の脳血流低下は抑制されず,PETCO2の変化に対する脳血管応答性は暑熱下運動トレーニングの時間帯の影響を受けないことが示唆された。
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