研究課題/領域番号 |
18K17859
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研究機関 | 上武大学 |
研究代表者 |
二橋 元紀 上武大学, ビジネス情報学部, 講師 (20738017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スポーツ外傷 / 慢性化予防 / 神経生理学的評価 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究は、スポーツ外傷が慢性化へと移行する神経系の時系列的な過程を明らかにすることを目指し、神経生理学的アプローチ、臨床的評価アプローチの2アプローチを設定した。
神経生理学的アプローチ:本研究では、スポーツ外傷の代表例として主に足関節捻挫を用いた。運動制御に重要な役割を担う皮質脊髄路興奮性の可塑的変化を検討するため、経頭蓋磁気刺激法を用いることにより、皮質脊髄路の興奮性指標として入出力特性(閾値、最大傾斜、定常値)、抑制性指標(サイレントピリオド)を足関節捻挫受傷後から時系列的(受傷後1週間後、2週間後、4週間後、2ヵ月後、3ヵ月後、および6ヶ月以上経過後)に評価した。また、受傷頻度の違いに伴う回復過程の変容を明らかするため、被験者を初回足関節捻挫群と足関節捻挫再受傷群、およびコントロール群(足関節捻挫既往なし群)に分類し、回復過程を比較検討することを進めている。現状で各群の被験者数にバラつきがあるため、まだ一定の結果を認めていない。しかしながら、足関節捻挫再受傷群では6ヵ月以上経過しても閾値が高いのに対して、初回足関節捻挫群では閾値がコントロール群に近づいてくる傾向を認めつつある。
臨床的評価アプローチ:足関節捻挫発生に対して影響を及ぼすと考えられる臨床的な足関節機能を含めた内的要因を神経生理学的な指標以外からも評価した。具体的に、足関節不安定性スコア評価 (The Cumberland Ankle Instability Tool: CAIT)、足関節筋力評価(主に外転筋力)、超音波画像による内部構造形態の把握を足関節捻挫受傷後から時系列的に行なった。足関節筋力は、時系列的な回復過程に伴い、回復してくる傾向にある。また、足関節不安定性スコアは回復過程とともに改善してくる傾向にあるが、被験者によっては不安定性が残存する例もあった。今後さらに検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
足関節捻挫受傷後の回復過程に対する神経生理学的な時系列的評価のうち、2018年度中に計画を予定していた皮質脊髄路入出力特性(閾値、最大傾斜、定常値、サイレントピリオド)に関する検証は概ね順調に実施することができた。経頭蓋磁気刺激を用いる評価であるため被験者選定(てんかん等)には注意も必要となるが、現状ではてんかんに関するガイドラインにも基づいて問題なく実施できている。 現時点での被験者数は大学生男女アスリート約16名であり、時系列的評価を受傷後2週間後から約6~8ヵ月後まで続けている。被験者を初回足関節捻挫群と足関節捻挫再受傷群に分類し、その神経生理学的な回復過程の違いを比較検討している。まだ被験者数に偏りがあるため、一定の結果には至っていないが、被験者確保および実験実施は順調と言える。 臨床的評価アプローチに関しても、Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)スコアによる慢性的足関節不安定性評価、足関節筋力評価、および超音波画像検査も時系列的に進めている。 上記の結果に関し、2018年度においては学会発表までは前進できなかったが、次年度以降において一定の学会発表は可能になるものと推察している。以上より、実験の進行程度、および結果に関しても順調な進展と考えられる。 一方で、2019年度から実施予定であった下肢筋支配領域に対するマッピング指標に関しても、少しずつその方法論を固めつつある。現状で、足関節捻挫受傷後のデータ測定は開始していないが、左右筋間での支配領域の比較検討などを進め始めている。今後さらに発展させていく。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度中では順調に約16名の被験者に対して、経頭蓋磁気刺激を用いる皮質脊髄路の時系列的な評価を順調に進めていくことができたが、初回足関節捻挫群と足関節捻挫再受傷群との比較検証をさらに信頼性の高い水準にしていくために、さらなる被験者確保および実験実施が必要である。さらに約15~20名程の被験者に対して検証を進めることができれば、結果の信頼性も担保されてくるものと考えられる。併せて、CAITスコア、筋力評価、ならびに超音波画像評価を継続的に実施し、皮質脊髄路に関する指標と臨床的評価との関連性を今後も引き続き検証していく予定である。 さらに、2019年度は皮質脊髄路に関するマッピング指標をさらに進めていく必要がある。現状で、足関節捻挫受傷後からの回復過程を追っていないので、2019年度から徐々に進め、一定の被験者数でマッピング指標による時系列的変容を評価していくとともに、臨床的評価との関連性を検討していく。その点を併せて検討していくことで、スポーツ外傷(主に足関節捻挫)が慢性化していく過程を多角的に明らかにしていくことが可能になると考える。特にどの時点で神経生理学的な変容を認めてくるのか、その時期を検証できると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度において、人件費・謝金を一定額使用する見込みであったが、一部人件費・謝金を抑えることができ、次年度使用額が生じた。 次年度以降、実験の質を向上させるために経頭蓋磁気刺激装置の追加部品の購入を予定している。さらに、人件費・謝金を充足させる予定であり、今後の研究がスムーズに遂行できるよう計画している。
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