欧米文化であるテニスを日本化した日本発祥のスポーツである軟式庭球は戦時期にどのような状況に置かれ、如何なる活動を行っていたのか。このような問題意識に基づき、本研究では大日本体育会の成立と展開における軟式庭球の動向を実証的に明らかにすることを目的とした。 研究4年目にあたる2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により2020年度に実施できなかった(1)戦時期日本の軟式庭球に関する史料の調査・収集を一部行った。特筆すべき成果としては、2019年度に調査した元日本ソフトテニス連盟会長寄贈史料が所蔵されている藤波テニスミュージアム(石川県能登町)を再訪し、前回収集できなかった史料を収集することができたことである。そして、これまで収集した史料の分析を通して(2)大日本体育会軟式庭球部会の組織構造と活動内容を検討した。軟式庭球部会の活動内容についての研究成果の一部として、競技規則についての論文(「戦時期日本における軟式庭球の国際ルール制定-東亜競技規則の制定経緯と特徴-」)を発表した。軟式庭球部会が1943年度に制定した軟式庭球東亜競技規則の制定経緯とその特徴について、敵性語である英語禁止の潮流の高まりに対応すべくすべての用語が邦語化されたこと、満洲国と連携しながら制定作業が進められたこと、「東亜」共通の競技規則という特徴を持っていたことなどを明らかにした。そして、軟式庭球東亜競技規則は、戦時即応への対応とともに軟式庭球の国際普及が意識された競技規則であったことを指摘した。
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