研究課題/領域番号 |
18K17865
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
東原 綾子 慶應義塾大学, 体育研究所(日吉), 助教 (90724237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮質脊髄路興奮性 / 出入力曲線 / 大腿二頭筋 / ハムストリングス |
研究実績の概要 |
ハムストリングス肉離れはスポーツ競技を問わず発生率が高い外傷であり、その受傷予防は近年のスポーツ医科学分野において重要課題である。本研究では、肉離れ受傷筋における筋活動動態および脳から筋に至る皮質脊髄路の興奮性を評価し、肉離れ受傷既往が末梢および中枢神経系を含めた神経筋の運動制御機構に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。初年度の研究成果により、競技復帰後であっても既往のあるハムストリングス自体の筋機能や伸張性が十分回復していない可能性がスプリント動作時に示唆された。これに加え本年度は、体幹への外乱刺激に対する姿勢制御時の体幹周囲筋の活動動態を分析し、ハムストリングス肉離れ受傷歴を有するスポーツ選手が既往歴を有さない選手に比べて筋活動潜時が長くなる傾向が認められた。 また、これまでの研究において明らかになった肉離れ既往脚における筋活動の低下には、末梢(筋)の機能不全のみならず運動制御に重要な中枢神経系の変容によって神経筋機能低下が影響している可能性を検証するため、これまで着目されてこなかった中枢神経系に着目し、まずは大腿部の筋(大腿二頭筋および大腿直筋)において皮質脊髄路興奮性の評価を試みた。健常成人男性32名を対象とし、経頭蓋磁気刺激装置を用いて大腿二頭筋および大腿直筋における刺激―応答曲線を取得し、皮質脊髄路興奮性調節の指標である最大傾斜、定常値、閾値の3つのパラメータを算出した。その結果、大腿二頭筋の出入力曲線の最大傾斜と閾値が大腿直筋のそれに比較して有意に低値を示し、二筋の皮質脊髄路興奮性の特徴が異なることが示唆された。これは、スポーツ活動中の筋出力調整の特徴が二筋で異なる可能性を示しており、ハムストリングス肉離れの発生メカニズムに寄与する神経生理学的要因への重要な知見となると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究成果は、当初の計画通り学会発表や論文掲載を完了した。さらに、大腿部筋における皮質脊髄路の入出力特性について成果発表の準備を進めており、次年度の研究推進の準備も整っていることから、本研究は計画当初の予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き大腿部筋における皮質脊髄路興奮性のデータ計測を行ない、ハムストリングス肉離れ受傷後のアスリートにおける評価を試みる。受傷筋の神経筋活動低下に至る神経生理学的機序解明に向けた基礎的知見を得ることを目的とし、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により成果発表を予定していた国際学会が次年度に延期となり出張取り消しとなった。次年度に予定通り研究成果発表を行うため、繰越額をその旅費として使用する。そのほかの助成金については当初の予定通り研究遂行のための資金として使用予定である。
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