2019年度は、筋の弛緩についての総説論文を執筆した。スポーツや楽器演奏を行う際の弛緩、弛緩動作に関連する神経疾患(ジストニア、パーキンソン病、脳卒中等)、弛緩を行う際の神経機構等に関する先行研究等を総説した。特に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や脳波計(EEG)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いた先行研究を中心に議論を行った。また、これまでに我々の研究チームで明らかにした、「筋の弛緩が他肢の神経機構に及ぼす影響」についても、TMSを用いた研究を中心に総説した。この内容は、国際誌Frontiers in Physiologyに掲載された。
また、筋の弛緩に関わる個人差について、様々な筋・動作を対象に網羅的に明らかにする研究の予備実験を行った。 6つの動作(指関節筋の屈曲、手関節の屈曲、肘関節筋の屈曲、肩関節筋の外転、膝関節筋の屈曲、足関節筋の背屈)を対象とし、収縮および弛緩(収縮からの脱力動作)を行った。被験者は、音合図に素早く反応し50%MVCの標的強度に素早く収縮を行う収縮課題と、50%MVCから素早く弛緩を行う弛緩課題を行った。弛緩を行う際には、意図的ではない拮抗筋の活動が生じる試行があるが、これらも弛緩の難易度の指標の一つとして評価することとし、様々な筋における筋弛緩の筋活動動態を明らかにする。 現在解析中であり、試技中の主働筋の筋活動から収縮・弛緩課題の反応開始時間・反応完了時間・反応開始から反応完了にかかる時間(所要時間)を様々な基準を設けて明らかにする予定である。
|