研究実績の概要 |
本研究の目的は, スポーツにおける脳振盪患者の眼球運動を測定し, 障害程度を定量的に評価する方法を明らかにすることである. 眼球運動の測定は非侵襲かつ高分解能な眼球運動測定装置 (赤外線照射の反射光量で光学的に眼球運動測定)を用いる. この研究により, 従来自覚症状のみだった脳振盪症状を可視化でき, 脳振盪の病因知見を得ること, 脳振盪後の競技復帰の客観的指標を得ること, コンタクトスポーツの安全性向上が可能となる. 方法. 18歳以上の脳神経外科外来にてスポーツによる脳振盪の診断をうけた患者を対象にデータ収集をおこなった. 期間中、コロナ禍によりスポーツ活動の実施が困難となり脳震盪の発生そのものの現象があったことより、データ収集に難渋し期間延長をおこなった. 結果. 65名の脳振盪患者に対して, 眼球運動測定を36名におこなった. 本研究で明らかになったことは①本方法での眼球運動測定で健常者よりも特異的な変化が観察できたこと(Rff15%以下) ②脳振盪症状の回復過程においてRffが改善し, 客観的で定量的な評価が可能となった. これらをもとに解析を加え、SCTA5回復状況と眼球運動の回復がSCAT5内のどの評価項目と相関するかの知見をえた 最終的には, 眼球運動の障害は, 精神心理的障害よりも身体バランス障害との相関が強いことが明らかとなった. 誌上発表に至ったRecovery process for sports-related concussion assessed with precise ocular motility, Hidetaka Onodera et al., Sports Medicine International Open, DOI: 10.1055/a-2183-1077.これにより眼球運動による回復を促進する可能性を見出すことができた.
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