経頭蓋磁気刺激(tES:transcranialelectricstimulation)は頭蓋骨上から微弱な電流を流すことで、脳の神経活動を修飾する手法である。その作用として神経細胞の興奮性を変化させることが示唆されている。それにより神経細胞の興奮性を高めたり抑えたり、脳の局所・全脳のネットワークや活動の同期を変化させることが報告されている。これらの脳の神経活動に対する修飾が機能の発現や学習の程度などを修飾できることが期待されている。tESは機能や状態に関連する領野をターゲットとして電極を配置し電気刺激を実施することで、その機能の発現や状態、学習や訓練から得る変化を促進、抑制する可能性が示唆されている。その効果は医療やスポーツなどへの適応が期待されている。その一方で、その効果は個人差が大きいことも示唆され、同一の刺激方法から一様な効果が得られないことから、安定した効果を得るためにはtESの効果に関連する個人差につながる要因を解明することが重用である。これらの要因には、解剖学的な要因として頭蓋骨の厚さなど電気刺激の流れやすさや、白質などの状態が関与していることが考えられる。また、脳波などに代表される活動の状態も刺激から得る効果に関与していることが考えられる。電気刺激の種類も効果を得るための重要な要因である。主に直流、交流、ランダムノイズの3種が用いられており、その中でも電気刺激の強さ、刺激の継続時間、課題実施中・課題前などの刺激タイミング、また、交流刺激の場合は用いるヘルツなども関連するため、一様な効果を得るベースメントの状態・刺激手法などはまだ確立することが困難であり、それらの関係について平均的な効果を得ることができる手法の開発とともに、個人の状態と合致した刺激手法の開発を進める研究が今後望まれる。
|