アスリートの精巧な運動パフォーマンスも,日常生活における何気ない動作も,地球上で行われている限り,身体を鉛直下方向へ牽引する重力(1G)の力学的作用を中枢神経系が考慮することで実現されている.報告者の研究を含めた種々の先行研究から,重力の力学的作用を中枢神経系は運動の制御に活かしていることが示唆されている.特に,それらの先行研究は,中枢神経系による重力の力学的作用の活用が,運動方向や運動局面によって異なる可能性を示している.本研究は,中枢神経系が重力の力学的作用をどのように活かしているのかについて,行動学的観点および生理学的観点からより一層の理解を図ることを目的としている.運動方向や運動局面によって重力の力学的作用の活用が異なる可能性(先行知見)を鑑みて,2018年度は,主に実験課題(運動課題)の検討,およびデータ分析方法の検討を行った.測定で使用する機器を種々購入し,それらを予備測定で用いつつ,本実験のための運動課題の詳細な検討,運動課題に適した測定部位の検討,および実験条件の検討を行った.また,本実験を進めるにあたり,運動学的データと生理学的データの分析方法についての検討も重ねて行った.なお,上記に関連して先行研究のレビューを行い,その成果の一部は「心理学ワールド84号」で公開されている.2019年度は,2018年度の活動に基づき,本実験を進める.そして,本実験で得られる研究成果の公表を順次行う予定である.
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