今年度は、漸増負荷自転車運動中の腕運動の付加が脚部の活動筋における脱酸素化応答の応答曲線に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした実験を実施した。対象者は健常な成人男性6名であった。全ての対象者は漸増負荷運動試験を脚運動、および脚+腕運動の2条件で実施した。脚+腕運動条件では、脚運動条件で記録した最大運動強度の50%に到達した時点から中強度(最大能力の60%相当)の腕運動を付加した。この際、外側広筋の脱酸素化濃度を測定した。その結果、脱酸素化濃度の増加停滞が生じる物理的運動強度は脚運動と比較して脚+腕運動時に低下した。しかし、相対的運動強度で観察した場合、運動方法による違いは認められなかった。漸増負荷運動を両脚、あるいは片脚で行うことが活動筋における脱酸素化応答の応答曲線に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした実験も実施した。対象者は健常な成人男性6名であった。全ての対象者は両脚、および片脚による漸増負荷自転車運動試験をそれぞれ実施した。この際、外側広筋の脱酸素化濃度を測定した。その結果、両脚運動時に生じていた脱酸素化濃度の増加停滞が片脚運動では生じなかった。この点に関して、追加検討として健常な成人男性6名を対象に脚運動、および腕運動時における漸増負荷運動試験を実施し、主要な活動筋(脚運動:外側広筋、腕運動:三角筋)の脱酸素化濃度を測定した。その結果、脚運動時に生じていた脱酸素化濃度の増加停滞が腕運動では生じなかった。また、腕運動や片脚運動のように循環機能が運動の制限要因になりにくい運動時における血流量の増加を総酸素化濃度で評価する点について考察するため、下半身陰圧負荷装置を用いて下半身陰圧の外側広筋、および上肢陰圧時の深指屈筋における総酸素化濃度を0~30mmHgの陰圧時に観察した所、陰圧の大きさに合わせて総酸素化濃度は順次大きくなる結果が得られた。
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