生活習慣病患者における概日リズム異常と生活介入による効果を検証する目的で研究を行った。2型糖尿病患者において、心拍変動による自律神経活動を評価したところ、健常者と比較して乱れが生じており、特に夜間の副交感神経活動の低下が著しかった。夜間の副交感神経活動は睡眠とも関連があり、また副交感神経活動の低下に伴う交感神経活動の相対的上昇は血糖値や血圧の上昇の原因となる可能性が考えられ、自律神経活動に焦点を当てた介入方法が効果的であると考えられる。 運動療法は虚血性心疾患や心不全患者において自律神経活動の異常を是正するという報告があり、糖尿病患者に対する運動介入が自律神経活動の改善に有効である可能性が考えられた。そこで2型糖尿病患者に対して運動介入を行い、自律神経活動の変化を観察することとしたが、短期間の運動介入では自律神経活動の明らかな変化は得られなかった。長期間の運動介入については患者を対象とした場合に十分に実践できないことも多く、運動療法を実践できたかどうかによってバイアスが生じる可能性があったため、2型糖尿病モデル動物を用いた実験を行うこととした。 2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスはレプチン受容体遺伝子の変異マウスであり、通常のマウスでみられる明暗リズムのサイクルに障害が生じていることが報告されている。特に食行動異常がみられ、明期にも摂食行動がみられることから、肥満となり慢性の高血糖状態を呈する。db/dbマウスに対してトレッドミルを用いて運動介入を行ったところ、血糖値や体重に変化はみられていないが、呼吸商に昼夜のリズムが生じた。また、摂食行動や活動に昼夜のリズムが生じており、運動はエネルギー代謝のリズムを形成することで活動にリズムを生む可能性が考えられた。
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