(1)睡眠段階時系列データの解析手法の拡張 離散的名義データとしての睡眠段階時系列データを特異値分解法を利用して量的データに変換し低次元化した後、それを動的モード分解DMD(Dynamic mode decomposition) を用いて数理的に特徴抽出することを検討した。DMDは、複雑な時系列信号を簡易な解析関数(固有関数)に分解するもので、その有用性から、近年、さまざまな分野で応用が検討されている。睡眠に関しても、脳波解析への応用は既に適用が報告されているが、睡眠段階時系列データに関する報告はない。睡眠段階時系列データ解析は、解析を行う時間の範囲(スケール)が数時間から数日と非常に長い点と、データが質的データである点が脳波と大きく異なり、DMDの有効性は明らかでなかった。DMDにはいくつかの手法があるが、ファーストステップとして最もシンプルなハンケル法を用いた。時間窓は一日(24時間)として固定し、遅延時間(一次元時系列を「時間遅れデータ」を用いて多次元化する)の設定を変化させて解析結果を比較し、有効性を見出した。現在論文化を進めている。 (2)c2推定法を覚醒時の眠気に対する応用展開 皮質-視床フィードバック結合強度c2(以下c2)の解析は本課題の大きな特徴であるが、睡眠時脳波に適用が限られてきた。本年度は覚醒時脳波への適用を検討した。その結果、日中の覚醒時であっても、c2値がとても小さく、短時間の「睡眠」と推定される状態があることが判明した。この結果は、睡眠中であっても短時間の「覚醒」状態があるという既知な現象と、ちょうど対称的な現象と言える。この結果を踏まえ、睡眠-覚醒遷移に関する新しい数理モデルを開発することを検討している。
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