本年度はまず、昨年度に国際誌に投稿していた定型発達児における運動機能が、後の情緒的発達の特徴をどの程度予測するのかについての論文の修正を行い、採択された。また、このテーマについての関連する論文を網羅的に概観し、所属する大学の紀要に発表した。 新型コロナウィルス感染症の感染拡大が未だ収まらなかったため、予定していた調査を行うことができなかったが、本年度の後半に約2年ぶりにこれまでに測定に参加していた自閉症スペクトラム障害者に対する測定を行った。パンデミックの前後で、その運動機能や社会性障害の程度に変化が認められるか検討したところ、社会性障害の程度については変化しない一方で、運動機能については低下が認められる者が多く認められた。こうした変化が、これまで定期的に実施していた運動課題に取り組む機会が妨げられたことによるものであるのか、これを含む身体運動の機会の減少によるものであるのか、直接的に検討することはできない。しかし、この結果は、身体運動の機会を担保することが、安定して表出できるようになった運動スキルの水準の維持に必要であることを示していると共に、自閉症スペクトラム障害における運動‐社会性連関や内部モデルの特性に対する新たな視座を与えるものである。現在、論文投稿に向けて準備中である。
|