当初設定した研究課題について、令和4年度の成果は以下の通りである。 ①近代柔術関係史・資料の収集と保存について。東京都在住の柔術関係史・資料の所蔵家の下に出向き、史・資料の収集と保存を実施した。特に貴重な和綴じ本の史料については修復作業を行なった。②講道館柔道における武術性の探求について。前年度までに収集した一次史料の分析を進めた。③大東流の普及過程の解明について。日本国内の合気道研究者から寄贈された雑誌史料について保存作業を行なった。
研究期間全体を通じた研究の成果は以下の通りである。 ①山形県最上郡・東京都・福岡県福岡市で現地調査・聞き取り調査・史料の収集を行なった。東京都在住の柔術関係史・資料の所蔵家の下に出向き、聞き取り調査を行った。同所蔵家の持つ史料は多く、全てを本研究期間に調査することは困難であることが明らかになった。その中で、大東流合気柔術の重要かつ基本的な史料を2点、保存することができた。福岡県の柔術道場では、同柔術流派の伝統的な稽古方法を見学することができた。以上の内容を、学会発表を2度報告した。②精力善用国民体育の受容者の反応について、学会発表を2度実施した。この成果に至る過程で、1940年に講道館で設置された研究会の活動を調査し、その成果を投稿論文として刊行した。昭和戦前期に柔道界で探求された当身技については、投稿論文1編・簡略版1編として刊行した。また、昭和戦前期の貴重な一次史料を一点閲覧・複写することができた。③大東流とそこから派生した相生流合気柔術の伝書を比較し、合気道と大東流の連続性について考察した内容を英語論文1編として刊行した。全体的な研究の進捗状況や今後の展望について、学会委発表を1度実施した。 ①と③に関して、大東流合気柔術については、収集・保存した史料をふまえ、資料集として令和5年度に刊行される予定である。
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