最終年度では、新型コロナウイルス感染拡大の影響から新たな実践介入はできなかったため、走ることが苦手な子どもの疾走動作の実態を明らかにすることを目的として既存のデータの分析を行った。 4年間の研究実施期間に得られた幼児、小学生の疾走能力および疾走動作のデータから、走ることが苦手な子ども、すなわち疾走能力(50m走タイム、疾走速度等)が同学年の同性別の平均値よりも劣る者については、走ることが得意な子どもに比べて合理的な疾走動作が身に付いていないということが明らかとなった。特に下肢動作についてその質的な差は顕著であり、走ることが苦手な子どもに対しては下肢動作を改善させるような指導によって疾走能力の改善が見込めると考えられた。 また、この見通しを受けて走ることが苦手な子どもに対して短距離走指導を行い、下肢動作の改善が疾走能力の向上に寄与すること、またストライドよりもピッチの向上の方が顕著であることなどが明らかになった。 これらの結果から、子どもの疾走能力については従来より発育発達に伴いある程度向上していくことが明らかにされていたが、疾走動作については特に走ることが苦手な子どもの場合、経年的な改善は見込まれにくく、体育授業その他の機会において子どもの疾走動作を改善しうる指導を行うことが重要であると考えられた。またその際には下肢動作の改善およびピッチの向上を意図した指導内容を取り入れることによって、疾走能力は大きく向上するであろうと推察される。 上記の研究成果については新型コロナウイルス感染拡大の影響から学会発表はせず、複数の学術誌への投稿を予定している。
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