研究課題/領域番号 |
18K17908
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研究機関 | 四條畷学園大学 |
研究代表者 |
青木 修 四條畷学園大学, リハビリテーション学部, 教授 (50637535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ノイズ前庭電気刺激 / 前庭誘発電位 / ヒラメ筋 / 立位 |
研究実績の概要 |
近年、ノイズ前庭電気刺激は健常者の静的立位バランスを改善させることで注目されつつある。しかしこの機序については未だ明らかではなく、また、歩行能力と密接に関連する動的バランスに与える効果についても十分な報告はない。本研究では、ノイズ前庭電気刺激によって前庭脊髄路の興奮性が変化するかについて検証することとした。 健常若年者9名を対象とし、ヒラメ筋の筋腹に電極間距離5㎝で電極を貼付して前庭誘発筋電図を記録した。立位中に、前庭矩形波刺激のみ、ノイズ前庭電気刺激+前庭矩形波刺激の2条件において、強度の異なる前庭矩形波(1mA、2mA、4mAで500ミリ秒幅)を用いて2~5秒おきのランダム間隔で32回刺激した。得られたヒラメ筋の誘発筋電図を加算平均し、反応振幅を記録した。ノイズ前庭電気刺激の条件は通電感覚閾値の70%の刺激強度をもつホワイトノイズとした。これら6条件(刺激強度3条件、ノイズ有無)をランダム順に実施した。 ヒラメ筋から得られた誘発電位のうち、短潜時の成分については1mAの電流強度では波形が明らかではなかったが、2mA、4mAの電流強度では強度が強いほど大きい振幅を認めた。さらに、ノイズ前庭電気刺激を加えることにより振幅が大きくなった。中潜時の成分についても電流強度が大きくなるほど積分値が大きくなる傾向がみられた。しかし、ノイズ前庭電気刺激の有無による積分値の差については明らかではなかった。 ヒラメ筋から得られる前庭誘発電位は、中潜時波形は大脳の下降性投射の影響を強く受けているとされており姿勢動揺に関与することが示唆されている。一方、短潜時波形についてはその役割は明らかではないものの、その潜時から前庭神経核から直接の投射である可能性が考えられる。ノイズ前庭電気刺激の影響が短潜時波形のみに認められたことは、この直接下降路の興奮性が高くなったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初計画よりもやや遅れている。計画では脳卒中患者19名程度を対象として実施予定であったが、測定対象の被験者数を十分に確保できなかった。現在は研究協力施設において被験者の確保のめどは立っており、本年度の計画案も計画通り実施できる見込みである。健常者では期待通りの結果が得られていることから、これを脳卒中患者に応用するとともに、さらに健常者でも基礎データの収集を継続しながら研究方法の精度を高めるよう工夫していく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては、脳卒中患者を対象としてデータ収集を進めるとともに、本年度計画の研究も実施する。数週間の介入による効果検証であるため、合併症や途中脱落など一定の被験者数を確保することが困難であることも予測される。この対処法として、介入期間の短縮、脱落例を含めた検討などの工夫を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究では、被験者の確保が計画通りに実施できず、データ計測にかかる人件費や謝金を十分に使用できなかった。また同様に、計測にかかる交通費や成果発表にかかる旅費などを計画通りに使用できなかったため、当初の使用予定額との相違が生じた。 当該年度の研究遂行に必要な物品などについて、当初予定以上の使用額が生じている。 次年度の研究計画を遂行するために必要な物品は当初予定よりも高額となる見積もりであり、当該年度に生じた金額を充てる予定である。 また、成果発表などにかかる旅費も発生するため、計画的に使用できると考える。
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