「前庭脊髄路の興奮性を高める最適な刺激強度とノイズ種類を明らかにする」脳卒中患者10人を対象として、麻痺側のヒラメ筋と前脛骨筋、非麻痺側のヒラメ筋と前脛骨筋の短潜時反射、中潜時反射について刺激強度間で比較した。その結果、短潜時反射の最大振幅ならびに電位量の指標では、ホワイトノイズ、ピンクノイズともに60%強度で有意に大きい値を示した。ホワイトノイズとピンクノイズ間では統計的に有意差は認められなかった。このことからノイズ種類(パワー)よりも刺激強度が重要であることが示唆された。 「前庭脊髄路の興奮性を高める最適ノイズ前庭電気刺激を用いた動的バランス改善効果の検証」脳卒中患者7名を対象として、ノイズ刺激による介入効果を検証した。 短潜時反射の振幅の指標では、一週間の介入後に基準値と比較して有意な増大を認めた。一方、ウォッシュアウト後ならびに偽刺激後では振幅が基準時と有意な変化は見られなかった。また、各評価時におけるノイズ有無による振幅の比較では、介入後では有意な差はみられなかった。このことから、ノイズ刺激による治療介入の効果はノイズ刺激なし状態の前庭興奮性を高めていることが示唆された。一方でノイズ適用時の前庭神経の興奮性増大には天井効果がみられる可能性も考えられる。重心動揺計を用いたクロステスト時の重心移動距離の比較では、介入による効果を認めなかった。ノイズ有無による比較では、左右方向の重心移動距離において、ノイズ有が無と比較して有意に大きい値を示した。 以上から、ノイズ刺激により前庭脊髄路の興奮性は増大すること、ノイズ刺激を用いた治療介入により興奮性の増大は維持されることが示された。一方、治療効果は短期間で消失すること、動的バランスに対する効果は小さい可能性が示唆された。
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