本研究は,運動と食事が,血管内皮機能にどのような相互作用を与えるかを明らかにするために,主に「運動による急性・慢性的な正の効果(運動誘発性血管内皮機能改善)」と「食事による一過性の負の効果(食事誘発性血管内皮機能低下)」との相互作用について検討を行った。これまで行った実験から,1) 食後高血糖が血管内皮機能へ一時的な障害を生じさせるが,食事前の運動実施により,そのタイミングにかかわらず,食事摂取後の一過性の血管内皮機能低下を抑制する可能性,2)食後の高強度間欠運動は食前の場合に比べ,食事摂取後の一過性の血管内皮機能低下を抑制する可能性,3)運動トレーニングによる急性効果が慢性効果に定着する可能性,が示唆された。 本年度は,2020年度に実施した運動トレーニング実験について,被験者数を追加した上で改めて研究結果を考察する予定であった。しかし,所属先の変更に伴い,計画を進めるために必要な研究環境の整備が困難であったことに加え,新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない状況によって介入実験は実施できなかった。そのため,これまでの研究結果の解析を再度行い,まとめの作業を進めた。結果として,当初の本件研究全体の検討課題はすべて予定通りに遂行して完了した。 なお,本研究を通して得られた成果から顕在化された新たな課題については,その解決に向けた研究計画が,幸い,科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金;若手研究)として現在採択されており,鋭意研究を進めている段階である。
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