音楽演奏者にとって,公演場面において喚起されるパフォーマンス不安(緊張・あがり)は,演奏の質に影響を与え得る深刻な問題である。本研究では,演奏者を対象とする質問紙調査を通して,パフォーマンス不安に伴って生じる心身の変化が,公演前後の異なる時期にどの程度自覚されているかを検討した。その結果,心理面の変化が最も多く自覚されていた。また,心理面・生理面の変化は主に公演前に,行動面の変化は公演中に自覚されることが示された。さらに,こうした心身状態の経時的変化に応じて,演奏者は,公演前後のさまざまな時期に異なる対処方略を用いていることが明らかとなった。
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