研究課題/領域番号 |
18K17917
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
原 文香 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (00781684)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 老化 / α‐Klotho遺伝子 / 腎臓 |
研究実績の概要 |
老化は加齢に伴う身体機能および精神機能の低下であり万人に生じる現象である。老化の原因の1つとして加齢によるミトコンドリア機能の低下と異常がある。本研究ではミトコンドリア機能改善薬Mitochonic acid (MA)-5を用いて、ミトコンドリア機能の直接的修飾による新たな老化予防方法の確立を目指す。平成30年度は老化モデルマウス(α-klotho遺伝子欠損マウス)を用いてMA-5による寿命延長効果について検討した。α-klothoホモKOマウスは早発性老化症候群モデルで成長障害・早期の死亡(平均寿命60日)、加齢に伴う腎機能低下、動脈硬化などの表現型を示す。薬剤投与実験に先立ち、α-klothoホモKOマウスの加齢に伴う病理変化を観察した。ミトコンドリア依存性の高い臓器である心臓、腎臓、肝臓、脳において、病理評価を実施した結果、心臓、肝臓、脳では、野生型と比較してα-klotho KOによる特徴的な病理形態変化は光顕観察では認められず、加齢による変化も観察されなかった。一方、腎臓ではα-klotho KOにより加齢に伴う皮質の繊維化の進行が観察された。MA-5は腎障害モデルへの投与により保護作用を持つことが報告されていることから、α-klotho KOへの投与においても効果が期待された。次にα-klotho ホモKOへの薬剤投与実験を実施した。投与はMA-5によるミトコンドリア機能正常化を介した老化進行の抑制を期待し、若齢(離乳直後、30日齢)から経口投与により実施した。投与試験の結果、MA-5投与により生存率の改善傾向(P=0.07)が認められ、延命効果があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は老化モデルマウス(α-klotho遺伝子欠損マウス)への薬剤投与実験を2回実施し、MA-5による生存率改善効果を明らかにした。またα-klotho KOマウスの病理評価を行い腎臓では加齢にともなう障害が顕著であることを明らかにし、腎臓がMA-5の標的臓器となりうる可能性を示した。これらのことからおおむね順調に研究が遂行できている。 しかし産前産後および育児休暇を取得したため、作用機序検証のためのミトコンドリア機能解析の予備検討や基礎データの収集などが十分に実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は作用機序の検証と老化抑制マーカーの探索を行う。作用機序の検証では腎臓におけるMA-5投与にともなうミトコンドリア機能変化を解析する。老化抑制マーカーの探索ではGC-MS/LC-MSを用いて老化モデル代謝物のアンターゲットメタボローム解析を行い、評価マーカーを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年12月から産前産後休暇および育児休暇を取得し研究が一時中断したため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、育児休暇終了後、平成30年度に実施予定であったミトコンドリア機能解析の予備検討と基礎データの収集のための動物および試薬購入に使用する。
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