研究実績の概要 |
本研究は、女性の睡眠障害の一因として、「女性は男性に比べて体内時計が進んでいるために、夜型の社会生活の影響を特に受け易い」という仮説を立て、エネルギー代謝、睡眠時の脳波及び深部体温への影響要因の解明を目的とし研究を行っている。睡眠に問題の無い健常な若年成人男女を研究対象者とし、1週間にわ たる生活・活動記録を行うとともに、アクチグラフにより睡眠/覚醒リズムを測定した。また 6日から7日目には、室温、湿度、光を一定に調節したヒューマン・ カロリメータにて睡眠時エネルギー代謝を測定し(同時に飲み込み式の体温計で深部体温を連 続測定した)、睡眠ポリグラフィ試験にて、睡眠状態の精査を行った。なお、女性は性周期の影響があるため、卵胞期および黄体期の両方測定を行った。睡眠は急速眼球運動(レム)睡眠と非急速眼球運動(ノンレム)睡眠に分けられ、ノンレム睡眠は更にN1、N2、N3の3つの睡眠ステージに分けられる。男性、女性の黄体期、および卵胞期の睡眠構築の比較では、男性が女性の黄体期と比べてN3に途中覚醒(WASO)が少ない傾向にあった。しかし、他の睡眠変数ではN1、N2、およびレム睡眠で顕著な差は認められなかった。男性の睡眠時エネルギー消費量は女性の黄体期、卵胞期より有意に高かった(P<0.01)。飲み込み型体温計で測定した深部体温においては、男女で有意な差が認められた。特に経時変化から見た女性の体温変動においては男性と比べて、黄体期では0:00-8:00、卵胞期では 6:00-7:00に有意に高かった。女性の黄体期、卵胞期の睡眠構築、エネルギー代謝そして深部体温の結果は、論文発表している(Physiol Rep. 2020;8:e14353. https://doi.org/10.14814/phy2.14353)。男性と女性との比較した上記の結果においても論文発表を行った(Sci Rep 11, 17849 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-97301-8)。
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