研究課題
以前の研究で、食事脂質由来腸内細菌代謝物が脂肪酸受容体に対して内因性のリガンドとよりも高い親和性を示すことを明らかにした。また、ある種の食事脂質由来腸内細菌代謝物による高脂肪食誘導性肥満モデルマウスに対する作用を検討した結果、抗肥満・代謝改善作用に寄与することを明らかにした。そこで、本研究では、食事脂質由来腸内細菌代謝物の分子メカニズムの解明を目的に検討を行った。食事脂質由来腸内細菌代謝物を負荷すると、腸管ホルモン分泌が著しく亢進することを見出した。さらに、その分泌能は内因性リガンドや前駆体、脂肪酸よりも強力であったことから、脂肪酸受容体の遺伝子改変マウスを作出し、その作用を検証した。その結果、食事脂質由来腸内細菌代謝物による腸管ホルモン分泌が消失した。同様に、腸内分泌細胞株を用いたin vitro評価系においても同様の作用が観察されたが、siRNAを用いたノックダウンによって、腸管ホルモン分泌は消失した。さらに、阻害剤を用いたシグナル解析によって、腸内細菌代謝物の腸管ホルモン分泌誘導の下流シグナルを明らかにした。さらに、食事脂質由来腸内細菌代謝物による耐糖能評価を検討した結果、顕著な経口糖負荷試験による耐糖能異常が改善されたが、脂肪酸受容体遺伝子改変マウスではその作用が消失した。従って、食事脂質由来腸内細菌代謝物の宿主代謝改善作用の少なくとも一部に、脂肪酸受容体を介した腸管ホルモン分泌による耐糖能改善作用が寄与していることが示唆された。引き続き、食事脂質由来腸内細菌代謝物の生体に及ぼす影響を評価するとともに、無菌マウスを用いた生理的意義の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
脂肪酸受容体に対して高親和性を示す腸内細菌代謝物の同定を行った。遺伝子改変マウスの作出を行い、腸内細菌代謝物のin vivoでの生体調節機能を明らかにした。
脂肪酸受容体を介した腸内細菌代謝物の作用が明らかとなったため、腸内細菌代謝物産生能を有する腸内細菌を単離し、ノトバイオートマウスの作出を行う。また、ノトバイオートマウスにおける腸内細菌代謝物の影響を評価することで、生理的意義の解明を行う。
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