研究課題
NADはエネルギー代謝の中核をなす補酵素であり、その存在量を維持することは加齢に伴う生理機能の低下を防ぐと考えられている。特にNADの前駆体を用いた介入試験は活発に進められており、NRやNMNといったNAD前駆体の生活習慣病予防効果が期待されている。その一方で、NAD代謝の全体像については不明な点が多い。そこで本研究では、NAD代謝の新規経路、特に代謝中間体の脱アミド化機構について着目し、その反応を触媒する酵素を同定することを目的とした。今年度は脱アミド化酵素を同定するために、NAD代謝中間体の脱アミド化機構についてin vitroにおける詳細な反応条件を検討した。その結果、この反応は非常にユニークな反応機構によって進行していることが明らかになった。また、この新規反応機構がin vivoでも起こることを確認するため、A549細胞に同位体標識したNAD前駆体を添加しその代謝物の変動を検証したところ、確かに新規反応機構によって脱アミド化が進行していることを確認できた。次にこの反応を触媒する酵素を同定するために、リコンビナントタンパク質を用いた解析を行った。この解析によって、反応を触媒する酵素ならびに低活性のアイソザイムを同定することができた。また、それぞれの酵素のノックアウトマウスを入手し、組織抽出物の酵素活性を測定することで、確かにこれらの酵素が生体内で反応を触媒していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
予定していた通り新規反応機構を触媒する酵素を同定することができ、またノックアウトマウスを用いて反応の確からしさを確認した。今後はこれらマウスを解析することで新規経路の生理的な役割を解明していく。
得られたマウスの表現型を調べることで新規NAD合成機構の生体における役割を検討する。また、各組織のNADメタボロームや遺伝子発現を測定することでより詳細なメカニズムの解明を進める。
本年度に組織由来からのタンパク質精製から酵素を同定する予定であったが、リコンビナントタンパク質を用いた解析で酵素が同定できたため計画を変更し、その結果未使用額が生じた。そこで、次年度のノックアウトマウス解析のための経費に充てることとしたい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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