研究課題/領域番号 |
18K17924
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森 博康 徳島大学, 先端酵素学研究所(糖尿病), 助教 (80611772)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サルコペニア / 1型および2型糖尿病 / 食事療法 / 運動療法 |
研究実績の概要 |
2019年度は1型糖尿病患者のサルコペニア治療を目的とした食事・運動療法の創出を目的とした臨床研究を実施することである。まずは1型糖尿病患者のサルコペニア発症に関わるリスク因子を横断的に多施設共同研究(iDIAMIND研究)で検証を行った。その結果、1型糖尿病患者は健常者および2型糖尿病患者と比べサルコペニア合併率が有意に高いことを明らかにした。なかでも65歳以上の高齢1型糖尿病患者の約40.0%はサルコペニアに該当しており、骨格筋量や筋力改善を目的とした治療方法の創出が必要であることが認識された。さらに1型糖尿病患者のサルコペニア発症に関わる原因として、高齢かつ腎機能の低下あり、身体活動量の低下、血清IGF-1の低下を有意に認めたが、多変量解析では年齢と血清IGF-1の低下が有意に選択された。また食事調査を実施できた症例を対象とした結果ではサルコペニアの有無ではエネルギーやたんぱく質摂取量に有意な違いを認めなかった。さらに5年間の筋肉量や筋力の低下に関わる食事・身体活動量の影響を検証したが、エネルギー・たんぱく質の摂取量、身体活動量共に筋肉量や筋力低下と関連しなかった。一方、1型糖尿病のサルコペニアありに関わる最も強いリスク因子として血清IGF-1の低下が選択されたことから、総インスリン投与量と尿中cペプチドとの相関性を調査したところ血清IGF-1とcペプチドとの間に有意な正相関を認めた。本研究の結果、1型糖尿病患者のサルコペニア発症は低栄養または不活動が原因ではない。加齢や1型糖尿病の病態的特徴である内因性インスリン分泌低下に伴う血清IGF-1低下がサルコペニア発症に関与していることが明らかとなった。従って、1型糖尿病のサルコペニア治療には食事や運動療法では改善できない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1型糖尿病患者を対象とした無作為化比較試験の着手が遅れている。高齢1型糖尿病患者のうちサルコペニア該当者を抽出したところ必要なサンプル数が得られていない。2型糖尿病と比べ1型糖尿患者の症例が少ないことが挙げられる。また、観察研究では1型糖尿病患者のサルコペニアありにエネルギー・たんぱく質摂取量の不足や身体活動量の低下が関連しないため、食事・運動療法の介入だけでは筋肉量や筋力が改善しない可能性がある。1型糖尿病の病態的特徴に沿った治療介入方法を選択する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
1型糖尿病のサルコペニアに関わる原因を明らかにしたので、原因に対した新たな介入方法の検討する必要がある。もしくはエネルギー摂取量やたんぱく質摂取量といったマクロ栄養素の介入ではなく、ミクロまたは食品機能性に注目した介入を検討する必要があるかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入研究のプロトコール作成に時間がかかり、2019年度の研究計画が2020年度に延長した。2020年に2019年度に収集したアウトカムの評価をおこなうこととなった。繰り越し金は観察後のアウトカム収集するための費用に使用する。
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