研究課題/領域番号 |
18K17926
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
上村 一貴 富山県立大学, 工学部, 講師 (50735404)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 健康教育 / 介護予防 / ライフスタイル / アクティブ・ラーニング / 理学療法 |
研究実績の概要 |
フレイル発生・進行予防にヘルスリテラシー(HL)が及ぼす影響を検証することを目的として、平成30年度は地域在住高齢者を対象としたコホート研究のベースライン調査を開始した。対象は、65歳以上の高齢者向け測定会に参加したもののうち、除外基準該当者を除いた304名(平均72.6歳、男性104名)とした。HLの評価には、栄養成分表示に含まれる健康情報の読解力を問うNewest Vital Signを用い、6点満点中3点以下を不良とした。フレイルは、J-CHSの尺度を用い、①体重減少、②活力低下、③活動量低下、④筋力低下、⑤歩行速度低下の5項目で評価した。解析の結果、HL不良群は良好群に比較して、フレイル尺度の該当数が2個以上の割合が高く(良好群: 4.8%, 不良群: 17.0%)、年齢が高く、教育歴が短く、全般的認知機能(MMSE)得点が低く、服薬数が多く、活動消費エネルギーが少なく、喫煙者が多かった(p<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果、HL不良は、単変量(OR[95%CI]=4.03 [1.69-9.58])、多変量(2.78 [1.09-7.14])のいずれのモデルにおいても、有意にフレイル尺度の2個以上の該当に関連していた。HLが低いことは、健康行動(身体活動や禁煙など)への参加度が低いことや、慢性疾患の自己管理(服薬アドヒアランスなど)の不良との関連が報告されており、それらの要因を介して、フレイル発生・進行の危険性を高める可能性が考えられた。 さらに、平成30年度ベースライン調査の結果から、HL不良と判定された高齢者60名を抽出・再リクルートし、週1回90分、24週間のアクティブ・ラーニング型健康教育を行う介入群と対照群にランダムに割付を行った。介入群には、「運動・栄養・知的活動による健康づくり」をテーマに健康行動の実践方法を学び、ライフスタイルの変容を促す教育介入を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の第1段階として、当初の計画通り、平成30年度中にフレイルとHLの関連性を調査する観察研究を開始した。横断的検討の段階ではあるが、フレイルの進行度とHLの良好/不良の間に、独立した関連性が存在することを明らかにした。さらに、調査への参加者からHL不良者のスクリーニングを行い、健康教育介入プログラムの効果検証のためのランダム化比較試験を開始している。 これらの状況より、観察研究(課題1)のベースライン調査の実施と介入研究(課題2)のリクルート・ランダム割付・介入開始が完了していることから、本研究課題は概ね計画通りに進展できており、引き続き予定された計画に沿って進行していく。
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今後の研究の推進方策 |
観察研究(課題1)の対象者数を増加させるとともに、12ヶ月後の追跡調査を行い、ベースラインのHLがフレイルの新規発生、または進行(フレイル尺度の悪化)に及ぼす影響を検討する。 また、介入研究(課題2)の介入後評価を実施し、24週間の教育介入プログラムによるHL、心身機能、ライフスタイルの向上効果を検証する。ランダム化比較試験の対象者は、介入後評価から24週間後にもフォローアップ評価を実施予定であり、介入の持続効果およびフレイルの予防・進行抑制効果を検証する。
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