研究課題/領域番号 |
18K17929
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
小川 亜紀 甲南女子大学, 医療栄養学部, 助教 (80612308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低蛋白質食 / ラット / 糞便移植 / ニューギニア / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
ニューギニア島Mimika地域には、炭水化物に偏った伝統食で生活する人々が居住している。彼らの蛋白質摂取量は極端に少ないと推察されるが健康的に見えることから、何らかの低蛋白食適応機構が存在する可能性が考えられる。本研究課題では、彼らから得た糞便検体を低蛋白質栄養状態ラットに移植することによる筋肉の保持・回復の効果を検討する計画である。 2019年度は、ラットにおける糞便移植(FMT)の予備的な実験を行い、実験条件を検討した。ラットは2週間、低タンパク質食(3%カゼイン食)を摂取させ飼育し、血清アルブミン値の低下から低蛋白質栄養状態ラットが作成できたことを確認した。減菌するため抗生物質を経口投与し、糞便の状態から投与量が適切であることを確認した。20%カゼイン食で飼育した健康なラットから採取した糞便を、低蛋白質栄養状態ラットに1週間、1日1回移植した。FMTを行わないラット群も設けて同様に検討した。移植の初日と終了日に糞便を採取した。最後にラットを解剖し、筋肉の重量(ヒフク筋、ヒラメ筋)を測定した。その結果、FMTによる体重維持・増加や筋肉量の保持・回復の効果は認められなかった。現在、腸内細菌叢について解析中である。 また、2019年度は、Mimikaの伝統食で生活する男女の食事内容と身体の健康状態を調査した。Mimikaの市街地には、現代的な食生活を送る人々も居住しており、対照として同様に調査し、伝統食群との比較検討を行った。その結果、伝統食群の蛋白質摂取量は少ないことが示されたが、身体計測値、筋肉量や体脂肪量について現代的な食生活群との有意差はみられなかった。血清アルブミン値は、両群とも正常値であり有意差はみられなかった。Mimikaの伝統食で生活する人々は、蛋白質摂取量が少ないにも関わらず健康的な身体であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験の条件設定ができたことから、次年度に計画している動物実験が進めやすくなった。また、ニューギニア島における調査、検体採取に着手できたことから、次年度は解析に集中して取り組めると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアの共同研究先にて保管している糞便検体について、腸内細菌叢解析を行う。腸内細菌叢の解析方法は既に確立している。また、その糞便検体を低蛋白質栄養状態ラットに移植することによる効果を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の予算は、ほぼ全額を使用した。繰り越しとなった研究費は次年度の予算と併せて、次年度に行うべき研究に使用する。
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