研究課題/領域番号 |
18K17932
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
中川 誠秀 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (30450703)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ストレス耐性 / 深層感情 / 可塑性 / 脳局所量 / 慢性疲労 / うつ状態 / 適応障害 / ストレス反応 |
研究実績の概要 |
本研究の対象は、うつ病性障害、ストレス性障害、適応障害ではあるが、それらの疾患と密接に関連する病態として、「慢性疲労」という概念がある。うつ状態では、活動性減退や易疲労感などの症状を認め、慢性疲労と症状が重なる。また、うつ状態には睡眠障害が頻繁に併発する。そこで、うつ状態と慢性疲労の相違を、睡眠習慣の差異により分別する試みを行った。自己記入式質問紙により被検者のうつ状態(Beck抑うつ尺度)、慢性疲労(Checklist Strength)、睡眠の質(東京都神経研式生活習慣調査票)の調査を行った。従属変数をうつ状態あるいは慢性疲労の程度、睡眠指標の各質問項目で得られたスコアーを独立変数として、stepwise法で重回帰分析を行った。慢性疲労とうつ状態の相関係数は0.56と有意な相関があった。うつ状態のみで有意な相関は、「不眠で悩んだ経験が多いこと」であった。その一方で、うつ状態と慢性疲労の共通点として、「ふだん、朝、目覚めた時の気分が悪い」、「居眠り・うたた寝が多い」、「普段の眠りが浅い」、「悪夢を頻繁に見る」項目と、有意な正相関があり、病態に共通部分が多いことが、睡眠障害の尺度では実証できた。 また、深層感情への適応が適切に処理できずに生じる神経症的傾向の脳神経基盤が、痛みや体性感覚と関連のあるある脳部位であった。この結果は、不安の強い患者に身体的愁訴が多いことと合致しており、精神と身体のインターフェースであることの実証となる(現在国際Journalに投稿中である。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東北大学加齢医学研究所内にあるMRI機器を使用予定であったが、新規機器への交換予定時期が大幅にずれることになり、かつコロナウィルス蔓延により、人との接触を限りなく少なくする必要が生じた。そのため、東北医科薬科大学病院内にあるMRI機器を使用することに変更することになり、同病院倫理委員会の同意を得て、全研究過程を、同病院内で完結するようにプロトコルを変更した。予定の被験者数は30名であるが、現在12名登録している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も、本研究を継続することになり、この間に目標の被験者数に達するように、応募を継続する。データが得られる度に、可及的速やかに情報を入力する。また脳画像も、可能な範囲で処理し、データが集まり次第、脳解析できるように準備を整えていく。同時に、論文化のために、最新の論文も含めた関連あるreview workを続け、英語による論文作成もIntoroducitionとMethodsの部分の作成を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画で当初使用予定であった東北大学加齢医学研究所のMRI機器が、2020年6月に新規の機種に交換となった。また、コロナウィルス感染症対策のため、当院治療中の患者のMRIの撮像は、治療の一環として当院で行うことが望ましくなった。更に、休職した患者の来院が、感染症対策による三密を避けることが推奨さえることもあり、減少した。現時点で10名が登録されているが、目標の30例にまだ達していない。そのため、1年間患者のエントリー期間を延長することになり、かれらの謝金として約30万円が必要である。以上より、次年度使用額が生じた。
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