精神的健康対策は、企業の健康管理室や臨床現場では必須である。職場の適応には、表層状態(うつ状態、慢性疲労、不安・困惑)のみならず、否定的な深層感情(孤独感、敵意、完璧主義、仕事中毒、低い自己効力感)が強く関わっているが、表出しにくい側面でもある。治療初期と治療後では、職場適応に影響を及ぼす表層状態や深層感情の要因が異なると、臨床経験から予測した。6か月の治療により、仕事適応の改善に伴い深層感情で改善したものは唯一「仕事中毒」のみであった。職場の健康管理において、本人のセルフケア対策のみでは限界があり、上司・同僚、医療従事者を含めて、深層感情に焦点を当てた治療介入が必要なことが示唆された。
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