研究課題
骨格筋萎縮の進行を促進させる新たなリスクファクターとして『肥満』が注目されているが、そのメカニズムは不明である。本研究は肥満が筋萎縮の進行を促進させる標的分子の特定とそのメカニズムを解明することを目的としている。本年度はC57BL/6Jマウスを用いて肥満-筋萎縮モデルマウスを作製した。マウスは通常食(CON)群および高脂肪食(HFD)群に分類し、HFD群には高脂肪食(脂肪分60%カロリー比)を16週間与え、肥満を誘発させた。16週間後、全てのマウスの右後肢にギプス固定を施し、廃用性筋萎縮を惹起させた。ギプス固定前、ギプス固定後3日および7日にマウス後肢筋(ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋)ならびに精巣上体脂肪組織を摘出した。16週間の高脂肪食負荷により、HFD群はCON群と比較して体重ならびに精巣上体脂肪組織に有意な増加が認められた(p<0.05)。筋重量においては、ギプス固定後7日目では、HFD群はCON群と比較してヒラメ筋と足底筋の筋重量低下率を有意に増加させた(p<0.05)が、腓腹筋は有意な変化が認められなかった。さらに、筋萎縮原因遺伝子であるMuscle RING-Finger Protein-1(MuRF1)とatrophy gene-1/muscle atrophy F-box(atrogin-1/MAFbx-1)の発現量を評価したところ、MuRF1遺伝子発現量は足底筋とヒラメ筋でギプス固定期間(Time) に主効果が認められ、ギプス固定期間(Time)と食事(Diet)の要因間で交互作用が認められた(p<0.05)。さらに、足底筋においてはHFD群のギプス固定3日目で有意な増加を示した(p<0.05)。atrogin-1/MAFbx-1の遺伝子発現量は足底筋およびヒラメ筋でギプス固定期間(Time)に主効果が認められた(p<0.05)。
2: おおむね順調に進展している
本研究は3年計画で実施され、平成30年度で1年目が終了した。研究代表者の研究機関異動により研究がやや中断している期間があったものの、肥満が筋萎縮を促進させる分子に関わる新規知見が得られた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
本年度では、肥満は廃用性筋萎縮におけるヒラメ筋と足底筋の筋萎縮率を増大させ、筋萎縮原因遺伝子の発現を変化させた。今後はこれらを引き起こす原因と考えられる炎症関連遺伝子(tumor necrosis factor α、Interleukin-6、JNKなど)の発現について解析し、肥満が筋萎縮率を増大させるメカニズムの詳細を明らかにしていく予定である。
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