研究課題
平成31年度は、若齢および加齢マウスの骨格筋を用い、加齢による筋萎縮におけるリン脂質代謝に関わる因子、さらにミトコンドリア機能・酸化ストレスとの関連性を検討した。加齢マウスは、若齢マウスに比較して筋湿重量、体重当たりの筋湿重量および筋横断面積が低下した。その結果に一致し、タンパク合成系の主要因子であるAktおよびp70S6キナーゼリン酸化タンパク発現、Insulin-like growth factor-1 mRNAの低下、タンパク分解系の主要因子であるユビキチンE3リガーゼ(Muscle RING Finger-1およびAtrogin-1)タンパク発現の増加がみられた。またリン脂質代謝の主要因子であるリゾフォスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)およびリゾフォスファチジルコリンアシル基転移酵素(LPCAT)のmRNAおよびタンパク発現を調べたところ、LPAATには全群で違いがなかったが、加齢マウスの骨格筋においてLPCAT1および2タンパク発現の増加がみられた。また加齢マウスは若年マウスに比較し、萎縮筋において酸化ストレス(NADPHオキシダーゼ4、4-HNE, 3-nitrotyrosine)増加、ミトコンドリア機能(MTCO1)低下が観られた。上述の通り、リン脂質代謝酵素であるLPCATsタンパク発現が加齢に伴い骨格筋で増加していたが、その挙動が酸化ストレス・ミトコンドリア機能指標の挙動と一致していたことから、ミトコンドリア機能低下および酸化ストレス増加は、部分的にLPCATs制御に関わっている可能性が考えられた。加齢による筋萎縮に対する特異的な標的因子を探索するため、今後は加齢マウスの萎縮筋サンプルを用い、萎縮に影響をおよぼすリン脂質代謝関連因子の網羅的解析を実施予定である。
3: やや遅れている
加齢による筋萎縮におけるリン脂質代謝酵素の役割を培養細胞および網羅的解析により検討する必要があったが、着手にいたらなかった。
今後は加齢マウスの萎縮筋サンプルを用い、筋萎縮に対する特異的な標的因子、特にリン脂質代謝にかかわる因子を見つけるため網羅的解析を実施する予定である。
購入予定であった生化学・分子生物学実験試薬等の価格と実際の購入価格に相違が生じたため。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
Vascular
巻: 28 ページ: 87-95
10.1177/1708538119868411.
Geriatr Gerontol Int.
巻: 20 ページ: 78-84
PLoS One.
巻: 14 ページ: e0216297.
Int J Cardiol Heart Vasc.
巻: 23 ページ: 100344.
巻: 19 ページ: 287-292.