運動中の肝糖放出率・骨格筋糖取り込み率の測定を目指したが、運動中のグルコースの安定同位体の注入量の設定が困難であったため、運動介入前後での高インスリン正常血糖クランプ検査による、安静時の内因性糖産生やグルコースクリアランス、臓器別(肝臓・骨格筋)インスリン感受性、インスリンクリアランスの測定と、1H-MRSによる肝細胞内脂質・骨格筋細胞内脂質の測定を行った。 対象は、定期的な運動習慣が週1回以下のメタボリック症候群のリスクファクターを1つ以上持ち、かつHOMA-IRが1.6以上の20歳から50歳の男性20名。エルゴメーターによるエネルギー消費量が300kcal/回の運動を連続5日間施行し、運動介入前と介入3日後の高インスリン正常血糖クランプ検査と1H-MRSを行った。 結果として、年齢38.2±8.6歳、BMI27.3±1.7㎏/㎡、体脂肪率28.7±4.2%であった。介入前後で空腹時血糖は有意に改善したが、空腹時のインスリン値や内因性糖産生、グルコースクリアランスは不変であった。介入前後で肝臓・骨格筋のインスリン感受性は有意に改善したが、インスリンクリアランスは不変であった。すべての被験者で肝臓または骨格筋のインスリン感受性は改善していたが、10%は肝臓のみ、25%は骨格筋のみインスリン感受性の改善を認めた。肝臓、骨格筋ともにインスリン感受性が改善した群を肝・筋型、肝臓のみの群を肝臓型、筋肉のみの群を筋肉型と定義した。各群間で明らかな特徴は認められなかった。一方、肝インスリン感受性の改善率は介入前のHDL-コレステロールと、骨格筋インスリン感受性の改善率は空腹時血糖値と空腹時グルカゴン値と正に相関した。以上の結果から、連続した5日間の運動により、すべての被験者でインスリン感受性は改善するものの、被験者により臓器別のインスリン感受性に対する寄与度が異なることが明らかとなった。
|