研究実績の概要 |
骨粗鬆症の重大なリスク要因である骨量の低値は、遺伝要因と生活習慣要因の影響を受けると言われている。そこで本研究では遺伝要因として遺伝子内DNA塩基配列のわずかな違いである遺伝子多型に着目し、若年女性(20~24歳)の骨量と遺伝子多型及び生活習慣要因の関係を明らかにすることを目的とした。これを基に遺伝解析情報を骨量の増強・骨量の減少予防に繋がる行動変容への支援に活用し、個々に望ましい生活習慣へ導くオーダーメイド栄養指導へと展開させるための基盤づくりを目指す。1)若年女性の骨量と骨代謝関連遺伝子多型との関連性を明らかにし、2)骨量に対する骨代謝関連遺伝子多型と生活習慣との交互作用を明らかにすることとした。 骨量は定量的超音波骨評価装置(日立アロカ株式会社AOS-100SA)を使用して右足踵骨で測定した。遺伝子多型は被験者の唾液から抽出したDNAを用いて遺伝子多型検出用リアルタイムPCRで解析した。解析した遺伝子多型は骨代謝関連遺伝子の中で最も代表的なビタミンD受容体のTaqI、ApaI、FokI、BsmI、Cdx2とした。身長、体重、運動習慣は質問紙を用いて、栄養素摂取量は食物摂取頻度調査法を用いて行った。 その結果、5つのビタミンD受容体遺伝子多型のうち、BsmI、TaqIにおいてBMIで調整を行うと骨量と遺伝子型に有意な差が認められた。さらに、Cdx2の遺伝子型はすでにカルシウム摂取量との相互作用による骨量の有意な差が認められたが(Oono F, Sakamoto Y et al. Nutrient, 2020)、他の遺伝子型(BsmI、TaqI、ApaI)もカルシウム摂取量との相互作用により骨量に有意な差が認められた。本年度の結果より、ビタミンD受容体の遺伝子型はカルシウム摂取量と相互作用を示し、若年女性の骨量に影響を与えることが明らかとなった。
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