定期的な持久性運動は、心血管疾患のリスクを低減させる血中HDL-C濃度を増加させる。しかし、HDL-C濃度を上昇させることが必ずしも心血管疾患のリスクを減少させないことが示唆されている。その背景として、HDL-Cの機能不全が考えられている。HDL-C引き抜き能は、抹消組織からコレステロールを引き抜くHDLの機能を表す尺度であり、従来の危険因子などとは独立して心血管疾患のより強い予測因子であり、心血管疾患の予防のための重要な鍵となっている。 コレステロールの合成は日内変動を有しており、夜に多くなることが示されている。それゆえ、運動がHDL-C引き抜き能に及ぼす影響は運動時間帯によって異なる可能性がある。 健康な若年男性12名を対象に2つの異なる運動実施時間帯(朝試行[9:00-11:00]および夕試行[16:00-18:00])において最大酸素摂取量の60%の時の心拍数で60分間のトレッドミル運動を1週間で3回(月、水、金曜日)実施した。また、両試行は2週間以上の間隔をあけ、クロスオーバー試験で実施した。朝試行の介入前の値をベースラインとし、各試行の介入後の血液サンプルの採取を行い、介入による血中脂質およびHDL-C引き抜き能の変動を検討した。その結果、両試行ともHDL-Cで介入後にベースラインに比較して有意な増加が見られた。さらに、TG/HDL比において朝と夕試行ともベースラインと比較して有意な減少が見られた。一方、血清TGとアポリポタンパク質Bの濃度は夕試行においてのみベースラインに比較して有意な減少が見られた。しかし、HDL-C引き抜き能においては両試行とも有意な変動は見られなかった。 これらの結果から、夕の持久性運動は、朝の持久性運動に比べて心血管疾患リスク因子により好ましい影響を与える可能性が示唆された。
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