研究課題/領域番号 |
18K17945
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研究機関 | 健康科学大学 |
研究代表者 |
志茂 聡 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (80734607)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 消化管運動障害 / 高脂肪食 / アウエルバッハ神経叢 / SBF-SEM / 3次元再構築 |
研究実績の概要 |
肥満を成因の一つとする2型糖尿病は、下痢や便秘など様々な自律神経障害を呈し、患者のQOLを低下させるがその病態や成因については未だ不明な点が多い。本研究では、腸管粘膜防御機能および吸収機構において重要な役割を果たす、アウエルバッハ神経叢を免疫組織化学的解析と連続ブロック表面走査型電子顕微鏡 (SBF-SEM)を用いた3次元的再構築による解析をおこない、食事性肥満による消化管運動障害の解明と新たな治療法を検討した。肥満モデルマウスとして 高脂肪食マウス(60Kcal% fat、高脂肪食群)を作製し、血糖値および摂食量、飲水量、糞便量を計測した。通常食マウス(16Kcal% fat、通常食群)と比較して高脂肪食群では、顕著な体重増加および血糖値の上昇がみられた。一方、摂食量および飲水量では、通常食群と高脂肪食群で有意な差はみられなかったが、糞便量では高脂肪食群で顕著に減少していた。免疫組織学的解析では、パラフィン切片とホールマウントを用いて小腸アウエルバッハ神経叢におけるsynaptophysin局在を通常食群および高脂肪食群で比較検討した。通常食群では、アウエルバッハ神経叢内および筋層間の軸索内に顆粒状のsynaptophysin陽性像を豊富に認めたが、高脂肪食群ではアウエルバッハ神経叢内の陽性像は減弱していた。一方、高脂肪食群フロリジン(ナトリウム/グルコース共輸送体阻害薬)投与後は、アウエルバッハ神経叢内に顆粒状のsynaptophysin陽性像を豊富に認めた。さらに、ミクロトーム組み込み型走査電子顕微鏡(SBF-SEM)を用いた超微形態解析では、高脂肪食群では軸索のVaricosity内のシナプス集積はほとんどみられなかったが、高脂肪食群フロリジン投与後は、Varicosity内のシナプス集積とともに軸索に多数の側枝の形成を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に計画されていた高脂肪食動物モデル作製は、ほぼ予定通りに作製することができた。パラフィン切片およびホールマウントによる免疫組織化学的解析と連続ブロック表面走査型電子顕微鏡 (SBF-SEM)での撮像も予定通り順調に取得できている。一方、当初予定していたセルカウントが実施できなかったため、取得したデータ解析はやや遅れてはいるが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度では実験実施計画に沿って、(1)平滑筋収縮能を解析するため副交感神経刺激薬(カルバコール)を用いた筋張力計測をおこなう。さらに、(2)消化管における蠕動運動でみられる、規則的なslow waveの発生を筋電図を用いて計測する予定である。補完的データの取得のため、神経生理学的解析では(3)マウス迷走神経を電気刺激し、逆行性に発火する単一神経細胞の活動電位を延髄迷走神経背側核にて記録して伝導速度を算出する。また、(4)順行性および逆行性トレーサーを用いてアウエルバッハ神経叢と延髄内における神経細胞の分布変化を比較する。さらに、2018年度の動物実験で作製した試料のアウエルバッハ神経叢内のSynaptophysin局在をより詳細に解析するため、2次元および3次元でのセルカウントによる解析をおこなう。今後は解析データを増やしていくとともに,画像解析方法の効率化を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、2018年度にパラフィン切片とホールマウントの免疫染色で得られたデータのSynaptophysin陽性部位を定量的に解析するため、セルカウントをおこなう予定であったが、学内施設での購入手続きに時間を要し、本年度での導入が困難となった。このため、定量的解析は次年度におこなうこととして、未使用額はその経費に充てることとしたい。2次元および3次元のセルカウントが可能となれば、アウエルバッハ神経叢内のSynaptophysin局在をより詳細に解析することができると考える
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