研究課題
本研究の目的は、健康・発病をコントロールする栄養素の相互作用を明らかにすることである。とくに、糖・脂質組成の異なる食餌を肥満モデルラットに投与すると、スクロースとリノール酸の組み合わせ特異的に、骨格筋の糖・脂質代謝異常や小胞体ストレス、炎症反応が惹起されることから、骨格筋は糖・脂質の相互作用に対し感受性の高い臓器であることが予想される。そこで本年度は、食餌中の糖質と脂質の組み合わせの違いが運動機能に及ぼす影響を検討するため、初年度に引き続き、骨格筋の形態学的変化に着目し解析を行った。糖質としてパラチノースまたはスクロース、脂質としてオレイン酸またはリノール酸を組み合わせた4種類の試験食をZucker fattyラットに4週間投与したところ、リノール酸投与群ではヒラメ筋の筋線維断面積が小さく、なかでもスクロースとの組み合わせで筋萎縮の傾向がより強くみられた。しかしながら、主要な筋タンパク質分解系であるユビキチン-プロテアソーム系に関わるMuRF1やAtrogin-1、筋再生マーカーであるMyoDやMyogeninの遺伝子発現に有意な差は認められなかった。一方、筋線維タイプを評価したところ、スクロースとリノール酸の組み合わせではTypeⅠ筋線維が顕著に増加していた。これに一致して、TypeⅠ筋線維への移行に関わる分子であるPGC-1αの遺伝子発現が、スクロースとリノール酸の投与で有意に増加していた。以上のことから、分子メカニズムは不明なものの、スクロースとリノール酸の組み合わせは、筋萎縮とともに筋線維の変化を引き起こすことが明らかになった。これらの結果は、食餌中の糖・脂質組成が骨格筋の量的・質的変化に影響を及ぼすことを示唆するものであり、サルコペニアなど筋減弱症に対する新たな食事管理法の基盤として期待される。
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