研究課題/領域番号 |
18K17951
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
梅野 彩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 産総研特別研究員 (20749098)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 緑内症 / 生活習慣 / 脂質酸化物 / 酸化ストレス / 前房水 / 眼圧 / 酸化 / 不飽和脂肪酸 |
研究実績の概要 |
緑内障は生活習慣病、ストレス、喫煙等に影響され、高眼圧、加齢、近視などが発症の原因と考えられているが、詳細な発症機序は不明である。我々は、新規酸化ストレスマーカーとして脂質由来の酸化生成物(異性体6種類)に注目し、その生成量から疾病の発症機序を解明する研究を推進している。とりわけ、10および12-ヒドロキシリノール酸は一重項酸素酸化特異的な生成物であり、生活習慣病の早期で血液中に高値を示すことを報告した。 本研究は、独自の酸化ストレスマーカーを用いて、「眼の局所的障害」と考えられている緑内障の発症に、生活習慣に影響された「体全体の障害」がどの程度関与するのかを定量的に解明することを目的とする。これまでに、緑内障患者を含む500名以上の血清分析の結果、脂質酸化物が眼圧に極めて有意に相関することを明らかにし、「眼の病態」と「体の酸化障害」の関与が示唆された。 平成30年度の研究実施計画では眼局所の酸化状態に注目し、最終的な目標である「眼の病態」と「体の酸化障害」の関与を明らかにするための有用なデータを得る。すでに得られている血清データと臨床データの詳細解析を行い、加えて、数百名以上の緑内障患者の眼試料中の各種酸化ストレスマーカーを測定することを目標とする。具体的には血清および臨床データから緑内障の病態、病種ごとの発症要因と酸化ストレスの影響を分析し、酸化ストレスに起因する酸化種を明らかにする。眼局所に関しては、眼の状態を反映する試料として前房水に注目する。前房水中の脂質酸化物は極めて低濃度のため、濃縮法等の前処理法を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施計画では眼局所の酸化状態に注目し、最終的な目標である「眼の病態」と「体の酸化障害」の関与を明らかにするための有用なデータを得る。すでに得られている血清データと臨床データの詳細解析を行い、加えて、数百名以上の緑内障患者の眼試料中の各種酸化ストレスマーカーを測定することを目標とする。進捗状況は、血清および臨床データの詳細解析により、緑内障の病態においての酸化ストレスに起因する酸化種を明らかにした(論文執筆中)。 前房水中の脂質酸化物測定については、測定に必須である濃縮法等の前処理法を検討中であり、近日中には前処理を含めた脂質酸化物の測定法が確立できる見通しである。
|
今後の研究の推進方策 |
前房水中の脂質酸化物の前処理法を確立し、順次前房水の測定を行う。得られた結果がすでに解析済みの血清データ(体の指標)の酸化ストレスの応答性を反映できるかを検証する。そして、緑内障の発症には「眼の局所的障害」and/or 生活習慣に影響された「体全体の障害」が関与しているかを精査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒト由来試料実施計画書の申請をしていたが倫理委員会の承認に時間を要し、前房水の測定の大半が次年度に生じた。前房水の測定法は構築の見通しができたことから、順次測定を行うことができる。測定に関する遅延は次年度への計画に大きな影響はないと考えている。
|