研究実績の概要 |
病因、疾患の進行、および予後を調査するためのバイオマーカーとして独自のヒドロキシリノール酸を提案している。ヒドロキシリノール酸の各異性体を用いて、「眼の局所的障害」と考えられている緑内障の発症に、生活習慣に影響された「体全体の障害」がどの程度関与するのかを定量的に解明することを目的とし、緑内障患者を含む500名以上の血液、眼試料を用いて緑内障の病態、発症要因に対するヒドロキシリノール酸による酸化ストレスの度合いを解析し、各病種に起因する酸化種を検討している。単変量、多変量分析の結果、フリーラジカルの酸化メカニズムが眼圧の上昇に関連している可能性があること、酵素酸化は特に原発開放隅角緑内障(POAG)の病因に関与している可能性(網膜神経節細胞損傷、等)が示唆された。 さらに詳細に検討を行うため、各種緑内障と対象群を合わせた全症例の眼圧を四分位により区分し、各眼圧のステージとHODEsから関連する活性酸素種を検討した。その結果、緑内障疾患血液中のHODEsは眼圧と極めて優位に相関することを明らかにした。また、緑内障の病態とHODEsを解析したところ、緑内障の中でも続発緑内障の原因となる偽落屑緑内障群は、HODE異性体のうち、ラジカル酸化特異的に生成される9,13-E,E-HODEsが高値を示した。つまり、本疾病とラジカル酸化の関与が明らかになり、9, 13-E,E-HODEsが病態を反映するバイオマーカーとしての有用性が示唆された。血清データ研究の成果から、緑内障において酸化生成物の関与が示唆され、生物学的サンプル中のヒドロキシリノール酸の測定は、緑内障の疾患マーカーとして有望であることがわかった。 眼局所的障害に注力し、眼の状態を反映する試料として前房水を用いて検討した。前房水中の脂質酸化物は極めて低濃度のため濃縮法等の前処理法を検討し測定法を確立している。
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