クルクミンは天然生薬ウコンの主成分であり抗炎症作用を有する。我々はこれまでに、運動前後における短期的なクルクミンの摂取が筋損傷を軽減することを明らかにしてきた。一方で、長期的なクルクミン摂取は、慢性疾患の治療や健康を保つために効果的であるが、筋肥大に関してはクルクミンの持つ抗炎症作用が肥大効果を弱めてしまうかもしれない。そこで本研究では、1.長期的なクルクミン摂取がレジスタンストレーニングによる筋肥大および筋機能(筋力・パワー)に及ぼす影響を検証し、2.筋肥大のメカニズムに及ぼす影響を筋線維再生系と代謝系に着目して明らかにすることを目的とした。 関連する研究として一昨年度に実施した、大学体育会に所属する男子サッカー選手を対象としたクルクミン摂取が試合後の筋損傷指標及びフィジカルパフォーマンスに与える影響についてのデータの一部から、新たな筋損傷指標(尿中タイチンNフラグメント)が競技現場においても有効であるかに焦点を当て、分析を行った。その結果、尿中タイチンNフラグメントはサッカーの試合前後で従来の血中筋損指標であるクレアチンキナーゼと同様の経時変化を示した。さらに、尿中タイチンNフラグメントと血中クレアチンキナーゼとの間に有意な相関関係が認められた。すなわち、尿中タイチンNフラグメントは、これまでに報告されてきたlabolatory-basedな運動負荷だけでなく、実際の競技現場においても非侵襲的な筋損傷指標になる可能性が示唆された。
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