本研究では、『CTSL低下によるリソソーム機能異常が代謝性疾患・老化の病態発症起点となっている』という仮説をたて検証を行っている。すでに代謝性疾患モデルとして、コレステロール合成律速酵素である3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase (HMGCR)を骨格筋特異的にノックアウトとしたマウスを用いた解析を行い、筋線維内でオートファジー異常が生じることを見出している。そこで、昨年度から導入した時期特異的・骨格筋特異的なHMGCRノックアウトマウスを解析し、HMGCRのノックアウトがオートファジー・リソソーム機能障害の評価を行った。同時に加齢によりHMGCR発現の変動およびコレステロールがどのように変化するかを解析するために、老齢マウスと若齢マウスの骨格筋を用いて解析を行った。 まず時期特異的・骨格筋特異的にHMGCRをノックアウトし、骨格筋におけるコレステロールおよびその中間代謝産物量を測定したところ、中間代謝産物であるsqualene量は顕著に低下した一方で、コレステロールが顕著に増加した。またこのコレステロールの蓄積はリソソーム・エンドソーム系に集中することから、オートファジー機能障害の原因はコレステロールが蓄積することに起因する可能性がある。また老齢マウスにおい、若齢マウスと比較して、HmgcrのmRNA発現が顕著に低下していること、ノックアウトマウスと同様にコレステロール中間代謝産物が低下し、コレステロールが蓄積していることを見出した。 これらの結果から、Hmgcrの発現低下はリソソーム・エンドソームにコレステロールの蓄積を引き起こし、オートファジー障害を誘導し筋委縮を引き起こす可能性が考えられる。今後はHmgcr低下によるコレステロール蓄積の詳細な分子メカニズム解析を行う。
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