研究課題/領域番号 |
18K17956
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
盛 喜久江 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10805956)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト糞便 / 温度条件 / 短鎖脂肪酸分析 |
研究実績の概要 |
腸内細菌は食事によりダイナミックにその組成が変化することから環境因子の一つとして捉えることができ、肥満・2型糖尿病をはじめとする生活習慣病やアレルギー性疾患発症の原因として考えられている。この発症メカニズムの一つとして、腸内細菌によって食事由来物質などが代謝されて産生される代謝産物が大変注目されている。従って血漿中および糞便中の代謝産物を測定することが疾患の発症メカニズムの解明に必須と考えられるが、糞便中には夾雑物が多く、また代謝産物は温度や湿度などの外部環境の影響を受けやすいため、サンプルの採取方法、保存方法、抽出方法、の仕方は非常に重要である。そこで糞便の採取方法・保存方法による代謝産物への影響を検討し的確な精度管理方法を樹立することを目的とした。これまでに多くの糞便中の代謝産物について報告されているが、サンプルの採取方法、保存方法、抽出方法は一定でないため、研究チームによって測定結果が異なっている可能性がある。そこで本研究では採取方法や保存方法が代謝産物の種類やその濃度に与える影響を検討し、糞便中の代謝産物の測定において的確な精度管理方法を行うこととした。 当該年度は前年度に引きつづき、ヒトの糞便のサンプル収集を行った。サンプルは、病院に勤務している栄養士を中心に集め、細菌検査時に糞便の収集に努めた。しかし、今年度は新型コロナウィルスの影響もあり、対象者からの協力が難しく新規では3例のみとなった。収集したサンプルを温度条件に応じて分注し、解析までは-80℃に保存している。1サンプルにつき温度条件を21に設定している。具体的には常温での暴露が30分以内、30分から60分以内、60分以上とし、それぞれさらに4℃、-20℃にて数段階の保管時間を設け、最終的には-80℃に保管している。 現在は短鎖脂肪酸の解析準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
サンプル収集方法を改良し、対象者の協力も得られたところだったが、前年度からの新型コロナウィルス感染症の拡大により一時中断となった。倫理面には十分に配慮し、追加で3例のサンプルが収集できた。これまで集めたサンプルについて測定の準備ができ次第解析し、データをまとめる予定である。データの測定と並行して、サンプルの収集を試み、次年度は最終年度のため解析を優先させる。
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今後の研究の推進方策 |
測定予定の糞便中の代謝産物としては、GC-MSによる短鎖脂肪酸分析(iso-酪酸、 iso-吉草酸、 n-吉草酸、 n-カプロン酸、プロピオン酸、 n-酪酸、酢酸)を検討している。 短鎖脂肪酸は、収集したサンプルは、測定日に合わせて前処理を行う。内部標準とMilliQをサンプルに加えよく混和した後、濃塩酸を加え混和する。その後遠心し、有機層をGC-MS測定用バイアルに移し、エーテルを素早く加えたら80℃にて加温し、数日遮光状態で保存した後に測定する予定である。この測定は、一度に100検体以上が測定できる。サンプル数が100程度用意できたので、測定準備が整い次第測定を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
標準品や試薬等をすべて購入予定としていたが、研究の進行が遅れていたため購入できなかった。次年度はすべての測定数を行うので、追加の収集および測定に必要な物品等に使用する。
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