研究課題/領域番号 |
18K17957
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大場 健太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90612010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 回想 / 楽観性 / 機能的MRI / 懐かしさ / 自伝的記憶 / 個人差 |
研究実績の概要 |
私たちは、特別根拠があるわけでもないのに未来は明るいと楽観視する傾向がある。適度な楽観性は精神的・身体的健康にも重要である一方で、楽観性は加齢とともに低下することも報告されている。近年、「懐かしい」自伝的記憶には短時間の回想で楽観性を高める効果があることが示されてきた。しかしながら、なぜ過去の回想が未来の思考に影響を与えうるのか、そのメカニズムは解明されていない。本研究では、回想による楽観性変化がどのような認知・脳メカニズムによって生じているか?そしてそれは加齢により変化するだろうか?という問いに認知神経科学的手法を用いてアプローチする。
2018年度はまず、MRIの中で実施可能な課題を検討するための予備心理実験を行い、その結果に基づいて回想課題を作成した。その後、若年健常被験者を対象に、回想課題実施中の脳活動を機能的MRIを用いて計測した。懐かしい記憶の回想の結果、先行研究と同様に楽観性が有意に上昇することが確認された。一方、この変化量は懐かしく記憶を回想した程度と相関しており、楽観性の変化には個人差があることが明らかとなった。さらに、脳活動解析の結果、記憶回想中の背内側前頭前皮質の活動が楽観性、すなわちポジティブな未来思考と関連することが示された。現在、脳領域間の機能的結合と効果の関連について分析を進めている。これらの成果により、過去と未来を結ぶ記憶の役割や回想法の効果の個人差のメカニズムが解明されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに若年健常被験者を対象とした実験を遂行することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者を対象とした実験計画を進める。課題を最適化するための予備調査の後、MRI実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に予定していた心理実験用PCの購入を次年度に見送ったため。今後PCを購入し、心理実験を複数人同時に行うことにより研究を加速させる。
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