高齢者には正常な認知機能が生活の質(Quality of Life; QOL)の向上に繋がるため、極めて重要な要素である。本研究では高齢者各自の認知機能レベルを自己判定できるように、簡便かつ分りやすい認知機能評価方法を開発する。さらに、認知機能の維持または低下を防止するための運動プログラムを開発・提案することを目的とした。令和2年度の研究計画では、昨年度まで得られた成果について論文作成に加え、参加者の血中アミロイドβの分析項目を追加して実施した。 1.二重課題運動(脳賦活訓練+身体運動)の実践が健常な高齢者の認知機能を継続的に維持または向上できるかどうかについて検討した。その結果、二重課題運動実践群と通常の日常生活維持群、両群における脳由来神経栄養因子(BDNF)の有意な変化はなかった。一方、パフォーマンステストを用いた認知機能テストの結果は二重課題運動実践群のみ、有効な効果が認められた。この成果は既に学術専門誌に投稿し、採択・掲載された。 2.①運動実践有無及び実践運動種類に対する血中アミロイドβ濃度変化の比較、②48週間の二重課題運動実践による参加者の血中アミロイドβの濃度変化を評価するために、昨年度にEnzyme-linked immuno-sorbent assay(ELISA法)を用いて血中アミロイドβ(1-40のみ)を分析した。さらに、より高い精度を有する質量分析法を用いてアミロイドβ1-40及びAPP699-711を追加分析した。また、アミロイドβ1-40、1-42及びAPP699-711から得られたデータに基づき、composite markerを算出し、①と②の課題別、血中アミロイドβの結果について再解析を進めている。
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