ヒトにおける肥満形成と脂肪摂取には正の相関が認められており、肥満者は正常体重者とカロリー摂取が同程度であっても、脂肪摂取量が相対的に高いことが示されている。 肥満を放置するとさらに重篤な糖尿病や心血管疾患、高血圧、脂質異常症などの健康障害をきたし、健康上の大きな問題となっている。抗肥満薬のターゲットとして、過食や脂肪蓄積の過程が注目され研究対象となっている。中枢での摂食制御には神経ペプチドが重要な働きをしており、この神経ペプチドによる摂食制御機構が抗肥満薬のターゲットとして活発に研究されている。 ガラニンは29アミノ酸から構成される神経ペプチドの一種で、脳内で脂肪摂取の調節をしていることがわかっている。実際にラット脳内にガラニンを投与すると、高脂肪食への嗜好性が高まることが報告されている。そのため、ガラニンは高脂肪摂取による肥満形成に関与している可能性がある。しかし、ガラニンは脳内の多様な領域に発現しているため解析が困難であり、機能的に未解明な部分が存在する。脳内でのガラニンを解析することで、肥満治療へのターゲットとして応用できる可能性がある。ガラニンを脳内に投与すると摂食行動を促進することがわかっているが、ガラニンに相同性のあるガラニン様ペプチドを鼻点より脳内へ投与すると、逆に摂食行動が抑制されることが報告されている。ガラニン受容体はこれまでに3種類クローニングされているが、ガラニンとガラニン様ペプチドで受容体への親和性が異なるため、相反する効果を示すと考えられる。そのため、ガラニンの詳細な神経回路を明らかにすることで、抗肥満薬開発に役立つと考えられる。
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