研究課題
近年、アルツハイマー病による認知機能低下にはmTORシグナルの過剰な活性化の関与が指摘されている。私たちの研究グループはこれまで培養細胞を用いたin vitro研究でテオブロミンやカフェインがmTORシグナルを抑制することを報告した。さらに、ラットを用いたin vivo実験でテオブロミンの作用を検討した結果、テオブロミン含有飼料(0.05%W/W)を摂取したラットの脳では、mTOR活性の指標であるリン酸化mTORの量が減少すること見出した。しかし、学習・記憶障害を有する動物へのテオブロミンの効果は不明である。そこで本研究では、1)学習・記憶障害を呈する老化促進モデルマウス(Senescence Accelerated Mouse Prone 8: SAMP8)およびその対照マウスである正常老化マウス (Senescence Accelerated Mouse Resistant 1: SAMR1)、さらに2)高齢マウス(23~24ヶ月齢)を用いて、テオブロミン含有飼料摂取がマウスの認知機能を改善するか否かを明らかにする。評価方法として、行動実験およびmTORシグナルを含む分子メカニズムの解明を行い、総合的にテオブロミンの効果を解明することを目的とした。これら実験の結果、テオブロミン含有飼料を摂取したSAMP8マウスにおいて、通常飼料を摂取したSAMP8マウスと比べ、認知機能が改善することが行動実験から明らかとなった。さらに、脳(大脳皮質、海馬)のBDNF量がテオブロミン含有飼料を摂取したSAMP8マウスにおいて、通常飼料を摂取したSAMP8マウスと比べ増加していた。高齢マウスにおいてもSAMP8の結果と類似した効果を示した。
すべて 2021
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Food & Function
巻: 12 ページ: 3992-4004
10.1039/D0FO03272G