研究課題/領域番号 |
18K17973
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
荻 寛志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70563188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 行動指標抽出プログラム |
研究実績の概要 |
【(1)自動計測系行動実験装置のための行動指標抽出プログラムの作成】自動計測系行動実験装置の生の計測結果は,装置内の様々なセンサーの検知時刻を全動物分まとめたものとなっており,そのまま解析に使用することはできない.解析においては各動物ごとの表現型につながる行動指標,例えば実験開始後1時間のコーナー訪問回数やそれらの時系列データなどが必要となってくる.またこれらの指標はタスクの構成に依存する.以上を踏まえ,実験装置の生の計測値を入力とし行動指標を整形出力するプログラムを,指標ごとに基本的な時系列データを生成するパートとタスク依存の処理を行うパートの二段構成で作成した. 【(2)自動計測系行動実験の具体的なタスク構成(動物に課す課題)と解析・数値モデル化に使用する候補指標の検討】タスク構成は,空間認知・学習能力計測として飲水可能コーナーを制限し飲水ごとに巡回させるタスク(3日間),衝動性評価として飲水箇所のドアを鼻でつつく動作の後数秒間待機させるタスク(3日間),不安評価として特定コーナー侵入時に空気噴出により不安を与えるタスク(3日間)とした.解析に使用する候補指標については,解析手法によっては生の評価値を用いると解析が不安定になることが明らかになったため,(タスク構成に依存する)正規化を導入することとした. 【(3)人工知能技術を用いた解析環境の構築】主成分分析や判別分析等については既存の統計ソフトで処理が可能なように(1)の行動指標抽出プログラムを作成している.時系列データを深層学習で解析できるよう,GPU搭載しつつもコストを抑えた解析環境を構築した.ソフトウェア環境は柔軟性と環境構築の容易性を考慮してPythonと既存フレームワークを使用することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
行動実験の詳細内容の決定や解析環境の整備などは進行したが,現在,行動実験および動物の飼育維持に予定していた施設の改修工事が行われており,動物を用いた実験が実施できてない.改修工事は2018年4月から開始され,2018年11月頃には再度施設の利用が可能になる予定であったが遅延している(現時点では動物実験で利用可能となる時期は2019年6月以降である).
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今後の研究の推進方策 |
施設改修の状況を見極め,必要に応じて行動実験内容の縮小や細胞モデルを用いた評価系での補完,補助事業期間の延長などを検討しながら進める. 行動実験では,動物数を削減し,疾患群と対照群を1つの装置内で同時計測することや,実験項目を削減することで実験期間を短縮することを考えているが年度内に解析が遂行できない可能性がある. 細胞モデルでの評価としては,成熟した神経細胞に対し,成人でのアルコール依存を引き起こす慢性アルコール曝露モデルを作製し,細胞の各種形態指標や遺伝子発現量,エピゲノム変化等を解析指標とする.胎児性アルコール症候群のモデルとしては独自に樹立したヒト胎児脳由来神経幹細胞から作製した脳オルガノイドを用いて,母親飲酒時の胎児脳内想定濃度のアルコールを曝露し,同様の評価を行う.解析については,形態指標は細胞ごとに深層学習による解析を実施する(行動実験用の深層学習環境を改変して利用可能である).遺伝子発現解析等に関しては外部委託を考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
行動実験および動物の飼育維持に予定していた施設の改修工事が行われており,動物を用いた実験が実施できてないことが,次年度使用額が生じた理由である.改修工事は2018年4月から開始され,現時点では利用可能となる時期は2019年6月以降である. 施設改修の状況を見極め,必要に応じて行動実験内容の縮小や細胞モデルを用いた評価系での補完などを検討しながら事業を進める予定であり,必要な器具等の購入に研究費を使用する.細胞モデルの評価は培養細胞を用いてアルコールを曝露し,評価指標として遺伝子解析等を実施するが,遺伝子発現解析等は研究費を使用し外部委託する予定である.
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