研究課題/領域番号 |
18K17973
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
荻 寛志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (70563188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疾患モデル / 神経幹・前駆細胞 / スクリーニング系 |
研究実績の概要 |
令和元年にかけて当初行動実験に予定していた施設の改修工事が実施され、工事後に施設利用制限事項が追加されるなど計画していた動物実験の遂行が困難となり計画を見直した。見直し後は、独自に樹立したヒト胎児脳由来神経幹・前駆細胞(Neural Stem-Progenitor Cells: NSPCs)から作製した脳オルガノイドによる胎生期脳曝露モデルを用い、アルコールや環境化学物質の胎生期曝露の影響を形態学的・分子遺伝学的に解析し、スクリーニング系の開発を実施中である。 アルコールや環境化学物質の評価スクリーニング系の開発に関して、まずは細胞増殖に関する評価実験ついてサンプル数を増やしてBisphenol A (BPA)とアルコールの曝露濃度を決定した。精神疾患においては興奮性神経ネットワークと抑制性神経ネットワークのバランスの乱れがメカニズムの一つとの報告もあることから、特に興奮性神経細胞/抑制性神経細胞分化に関連する遺伝子群の特定を目指した。しかしながら、独自に樹立したヒト胎児脳由来NSPCsを分化培養してタンパク発現を確認したところ、人工的な誘導なしでは抑制性神経細胞は分化してこないことがわかってきたため、神経細胞・グリア細胞分化への影響をより短期間で評価する系へ変更した。 年度末には、不死化したNSPCsにBPAと極低濃度のアルコールを曝露させて分化培養を試みたところ、BPAとアルコール曝露群において対照群よりも神経細胞が早く分化を始める可能性が示唆されたが、アルコール単独曝露の影響が否定できず再現性を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度始めには興奮性神経細胞/抑制性神経細胞分化に関連する遺伝子群の特定を目指して、不死化したNSPCsを用いた系を組んでいたが、実験系を変更したことと、不死化したNSPCsの増殖が非常に早いので再現性を得られにくいことから不死化していないNSPCsへと細胞株を変更したことなど新規の実験方法を構築したため、年度末にようやくデータが出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは早急に神経細胞分化へのタンパクレベルでの影響について確定する。アルコールの影響である可能性があるのでアルコール単独曝露での評価も同時に行う。以降、単一細胞RNA-seq法による遺伝子プロファイル取得とin silico疑似時間解析法による個々の細胞分化を規定する特徴遺伝子の抽出、疾患モデルにおいて影響を受けている細胞分化関連遺伝子群を特定することを通して、脳形成異常を示す化学物質スクリーニング系の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年にかけて当初行動実験に予定していた施設の改修工事が実施され、工事後、施設利用制限事項が追加されるなど計画していた動物実験の遂行が困難となり計画見直しを行った。見直し後は、独自に樹立したヒト胎児脳由NSPCsから作製した脳オルガノイド等による胎生期脳曝露モデルを用い、アルコールや環境化学物質の胎生期曝露の影響を形態学的・分子遺伝学的に解析し、スクリーニング系の開発を実施中である。 今年度の研究実施においては、新型コロナウィルス感染症の影響と、年度途中に不死化NSPCs利用から非不死化NSPCs利用へ実験法を変更したことから研究費使用額に差が出ている。 引き続き、NSPCsによる疾患モデル(アルコール・環境化学物質曝露)を用い、神経分化関連遺伝子プロファイル解析を通した化学物質スクリーニング系確立のために研究予算を執行する。
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