研究課題/領域番号 |
18K17973
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
荻 寛志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (70563188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 疾患モデル / 神経幹・前駆細胞 / スクリーニング系 |
研究実績の概要 |
独自に樹立したヒト胎児脳由来神経幹・前駆細胞(Neural Stem-Progenitor Cells: NSPCs)による胎生期脳曝露モデルを用い、アルコールや環境化学物質の胎生期曝露の影響を形態学的・分子遺伝学的に解析し、in vitroスクリーニング系の開発を企図している。令和2年度には不死化したNSPCsにビスフェノールA(BPA)と低用量のアルコールを曝露させて分化培養を試みたところ、BPAとアルコール曝露群においてvehicle群よりも神経細胞が早く分化を始める可能性が示唆されたが、アルコール単独曝露の影響を否定できないという課題が残っていた。そこで、令和2年度に立ち上げた不死化しないNSPCsによる実験系を用いて、低用量のアルコールの影響がないことを確かめた。その上で低用量BPA曝露またはアルコール曝露し、曝露後の用量依存的な神経系細胞分化への影響をタンパクレベルで評価した。評価は神経幹細胞マーカー(Sox2)と、未熟神経細胞マーカー(DCX)を指標として用いることとし、これまでの結果より変化が期待される100nM BPA曝露における分化動態に着目して検討したところ、曝露後7日で、vehicle群に比し、Sox2陽性細胞数(/核の総数)が有意に減少、DCX陽性細胞数(/核の総数)が有意に増加した。次に、低用量BPA曝露によって撹乱される遺伝子発現変動を見出すために、定量PCRにより発現遺伝子量を経時的に評価した。その結果、BPA曝露群においてvehicle群と比較して、神経幹細胞マーカーの発現量がより早期に減少し、且つ、中間型前駆細胞マーカーの発現量が早期に増加した。以上の解析と並行して形態学的な解析を進めており統計解析結果を出すところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単一細胞RNA-seq法を行う計画であったが、ヒト胎児大脳皮質及びヒト大脳オルガノイドの解析により抽出された細胞分化関連遺伝子群(J Gray Camp et al. 2015、Suijuan Zhong et al. 2018)をマーカーとして、BPA曝露の影響を定量PCRにて代替できると考えた。手法の変更をしたものの、現在はこの解析から焦点を当てた遺伝子群について、タンパクレベルでの経時的な評価をしており、目的達成に向けて実行中である。
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今後の研究の推進方策 |
定量PCR結果を確定するとともに、挙げられた遺伝子群についてタンパクレベルでの影響を経時的に評価するためhigh content imaging(形態学的特徴も同時に評価することを目指す)と時系列解析を用いて解析する。疾患モデルにおいて影響を受けている細胞分化関連遺伝子群を特定することを通して、脳形成異常を示す化学物質スクリーニング系の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究実施においては、新型コロナウィルス感染症の影響により研究費使用額に差が出ている。 引き続き、NSPCsによる疾患モデル(アルコール・環境化学物質曝露)を用い、神経分化関連遺伝子プロファイル解析を通した化学物質スクリーニング系確立のために研究予算を執行する。
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